コロナ禍の外出自粛ムードの中、消費の全般的な停滞が続いている。昨年春の緊急事態宣言の解除以降、ウイズコロナでの生活様式が浸透するにつれ消費は徐々に回復傾向となっているが、消費支出全体の約半分を占める高齢者世帯の消費は十分に回復しておらず、これが長引く消費不況の大きな要因となっているようだ。
4月6日に公表された日本総合研究所のレポート「日本経済展望2021年4月号」によれば高齢者消費の回復が本格回復へのカギを握るとされている。レポートによれば、2月のクレジットカード決済の消費額で消費動向を見ると、2018年比で9.8%のマイナスと12カ月連続の減少となっている。しかし、前年同月比の減少幅は徐々に縮小しており「足許の消費活動は持ち直しに転じていると判断」している。しかし、消費支出の約半分を占める高齢者世帯(60歳以上の無職世帯)の消費が勤労者世帯(59歳以下)以上に落ち込み、回復ペースも鈍く、これが景気に大きな影響を与えているとしている。
この背景として、高齢者は感染・重症化への警戒から外出を控える傾向が強いことが挙げられている。実際、レポート内で示されているMove Design Labのデータから感染増加に比例し60歳代、70歳代の外出率が若年・中堅層と比べて強く落ち込む傾向があることがわかる。また、インターネットの利用に不慣れな高齢者も多く、ネットショッピングが広がっていないことも高齢者の消費低迷の要因になっていると指摘されている。
高齢者世帯の収入は新型コロナ禍においても安定だ。年金が主な収入だが、20年度の年金額はコロナ前の経済を反映しプラス改定されており、企業業績悪化で所得が減少している勤労者世帯とは対照的だ。所得が安定的で消費が減少したため高齢者世帯の消費性向(所得に対する消費の割合)は大きく低下したままだ。勤労者世帯では既にコロナ前の水準に回復している。単純計算すると高齢者世帯の消費性向がコロナ前に回復した場合、増加する消費額は約4兆円になる。これは20年の個人消費の減少額17兆円の約4分の1にあたる。
レポートでは「個人消費の回復が再び明確化するのは、高齢者を中心にワクチンの普及が進む秋以降」になると見込んでいる。(編集担当:久保田雄城)