安全保障上重要とされる施設、米軍基地、原発などの周辺、国境近くの離島に関し、土地利用を規制する「土地利用規制法案」が連休明けから国会審議入りの見通しだ。しかし重要施設とは何か、政府が行う調査内容がどのようなものか、国会での法案審議で明確にする必要がある。私権制限、プライバシーに対して慎重であるべきだからだ。政府が恣意的に調査できないよう、調査内容に歯止めをかけることが法案審議の中で明らかにされなければならない。
同様の問題提起を西日本新聞も4月3日電子版コラムで指摘している。「私権制限の不安消えぬ」との見出しで「重要施設が何を指すのか、政府の行う調査はどんな内容か。いずれも政府が今後決めるという。これでは国会のチェックは働かず、行き過ぎた私権制限やプライバシー侵害の恐れが拭えない」。
西日本新聞は恣意的運用リスクについて「杞憂(きゆう)ではない」と指摘する。「陸自の情報保全隊は2003~04年、イラクへの自衛隊派遣に反対する団体や個人の情報を集め、内部文書にまとめていた。市民団体や宗教団体まで幅広く、高校生のグループも含まれていた。中国地方でも16団体、27件の集会やデモなどが『監視』対象だった」と具体例を挙げ、監視された人の提訴で違法判決が確定しているが「今回の法案が通れば、市民のプライバシーに踏み込む調査に法的根拠を与えかねない。スパイ行為や妨害の防止が狙いなら、別の施策を検討すべきだろう」と警鐘を鳴らしている。
日本共産党も機関紙赤旗5月1日電子版で「土地利用規制法案『まるで戦争前夜』普天間基地のある宜野湾市民 丸ごと監視対象に」との見出しで「沖縄県の米軍普天間基地周辺が区域指定された場合、同基地を抱える宜野湾市の住民は丸ごと監視対象にされかねません」と報じた。
赤旗は「同法案は米軍や自衛隊基地、原子力発電所などの周囲約1キロと国境離島を『注視区域』に指定し、政府に土地・建物の所有者らの個人情報と利用状況を調査する権限を与えるもの」と説明したうえで、調査に関しては「氏名、住所、国籍にとどまらず、思想信条や所属団体、家族・交友関係、海外渡航歴などに及ぶ可能性がある」と現行法案のままでは政府が個人のプライバシーに踏み込む危険があることを指摘する。政府が恣意的に介入できない歯止めを担保することが強く求められる。(編集担当:森高龍二)