日本のマクロ経済は、ウイズコロナで加速するIT投資やEC関連の運輸業の好調、また中国に牽引されたアジア経済の復調を受け、昨年秋から製造業を中心に急速に持ち直している。しかし、コロナ禍の自粛ムードの中、個人消費は低迷し続けており、飲食、宿泊、旅客運輸、そしてアパレル関連は不調のままだ。昨年の秋にはアパレルの大手レナウンの倒産もあり、コロナが主要な原因ではないが、コロナ禍でのアパレル低迷を象徴した出来事だった。しかし、3月の宣言解除後、気温も上昇し外出する者も増え始めた関係か、アパレルでも復調の兆しが見られるようだ。
4月30日に帝国データバンクがアパレルを中心とした衣服類販売を手がける上場企業等のうちホームページなどで月次売上高を公表している24社について本年3月分の全店実績を集計、分析を行ったレポートを発表している。レポートによれば、集計対象となった24社のうち2021年3月の月次売上高が全店ベースで前年同月を上回ったのは20社で調査対象24社中の83.3%と8割超えとなった。逆に、前年同月より下回った企業は4社で構成比は16.7%を占めている。前年同月比が下回った企業は前月2月の18社から14社に減少しており復調の兆しが見られる。
昨年3月は既に自粛要請が出され新型コロナの影響が本格化していた時期で、全店売上高の前年同月比の平均が約7割と大きく落ち込んでいた。これに対して本年3月は、延長されていた首都圏1都3県における緊急事態宣言も21日で全面解除となり、自粛疲れと春らしく暖かくなった気候の影響もプラスに作用し、実店舗の客足の戻りも順調で、これが売り上げに反映された企業が多くみられ、昨年の大きな落ち込みから反動増となる企業が増加したようだ。
しかし、コロナ以前と比較すると、19年3月より本年3月の売上高が上回ったのは全体の20.8%にあたる5社のみで、一方、下回ったのは19社、全体の79.2%と約8割を占めており、持ち直し傾向が見られるとは言うものの、コロナ以前の水準に回復したとは言えない状況のようだ。4月も引き続き反動増となる企業が目立つ可能性が高いと見込まれるものの、変異株の流行で感染者も増加傾向となり、まん延防止措置の適用や月後半には3度目の緊急事態宣言が発出されたことなどで増加幅は縮小し、再び厳しい環境に転じることも予想される。(編集担当:久保田雄城)