積水ハウス株式会社とタイムズ24株式会社、タイムズモビリティ株式会社は、積水ハウスが全国に展開している賃貸住宅「シャーメゾン」併設の駐車場に、タイムズの駐車場シェアリングサービスおよびカーシェアリングサービスを全国規模で展開する業務提携契約を締結したことを発表した。
これまでにも、分譲マンション併設駐車場の空き区画を有効活用するようなサービスは提供されてきたが、ここまで大規模なものはおそらく業界で初。しかも、業界最大手同士がタッグを組む事業とあって、今後の動向が注目される。
両社の業務提携の背景には、少子高齢化と若者世代の自家用車離れによって大きな変革を迫られている駐車場業界の現状が見受けられる。実際、国土交通省が公表している「乗用車保有台数の推計結果」を見ても、2020年時点での乗用車の保有台数は全国で計6540万台だが、今後は減少に向かうとみられており、2050年には5810万台にまで落ち込むと推計しているからだ。
一方、必要な時にだけ車をシェアして利用する「カーシェア」の需要は増えている。昨年の緊急事態宣言以降、外出自粛の動きが広がったことで、利用者は一時半数近くにまで落ち込んだともいわれているが、その後、「GoToトラベルキャンペーン」や、電車利用による三密を避ける目的でカーシェアサービスを利用する人が徐々に回復し始め、コロナ以前に近い数字にまで戻りつつあるという。
そんな中で発表された、積水ハウスとタイムズ24、タイムズモビリティとのコラボレーションを見てみよう。
具体的には、全国に約12万棟ある「シャーメゾン」を管理する積水ハウス不動産各社が、賃貸オーナーにむけてサービスの導入を案内する。タイムズ24はそれを受け、一時的な駐車場ニーズにも対応可能な予約制駐車場「タイムズのB」を「シャーメゾン」の駐車場の空き区画に展開。来訪者用としてはもちろん、一般の利用も可能にする。また既存の駐車場を活用するので、新たな整備やゲート機器など新規投資が必要なく、両社にとっても効率的に展開できる。都心部ではとくに、慢性的な駐車場不足の緩和や路上駐車などの削減効果も期待できそうだ。また、タイムズモビリティは駅近などの利便性が高い立地にあるシャーメゾンの空き区画にカーシェアリングサービス「タイムズカー」を設置。利用者の利便性向上を図り、サービスネットワークの拡大を目指す。両サービスともにWEBまたアプリから利用ができる。6月より順次、サービスを導入していく予定だ。
この取り組みが成功すれば、駐車場の空き区画に頭を悩ませるオーナーの負担が軽減するだけでなく、賃貸住宅経営を検討中の、将来のオーナーにとっても有力な選択肢になるのではないだろうか。また、自動運転自動車が普及すれば、車は所有するものから共有するものに移行していくという見方もある。コロナの終息とともに、自動車も駐車場も本格的にシェアする時代が到来するかもしれない。(編集担当:藤原伊織)