女性が企業の中で活躍する機会は増えているのだろうか。21日に厚生労働省が発表した賃金構造基本統計調査で、平成24年度の女性の平均賃金が0.5%上昇し、過去最高を記録した。
自民党が昨年の衆院選で掲げた公約の中にもある『女性力の発揮』。「社会のあらゆる分野で2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上とする目標を確実に達成し、女性力の発揮による社会経済の発展を加速させる」とした同公約の具体的な政策として経済成長の項目で挙げられたこの内容は大いに注目を集め、「ウーマノミクス」というキーワードも改めて意識されてきた感がある。
昨今の大ヒット商品の数々には女性の企画や開発によるものも決して少なくない。少し古いがNTTドコモ の「iモード」は当時の社員だった松永真理氏がコンセプト、ネーミング、ロゴマークに至るまでを考えたというのは有名な話だ。最近でいうと、ロングセラーとなっているパナソニック の「ナノケア」シリーズは女性を中心としたチームで作り上げた人気商品。また、昨年の塩麹ブームの中、それを牽引した中心的商品のマルコメ「プラス糀」は女性だけのプロジェクトチームが生み出した商品だ。
このような「女性力」を活用する企業を積極的に支援する自治体もある。
埼玉県は昨年4月、「ウーマノミクス」を推進するため、「ウーマノミクス課」を「産業労働部」内に設置した。同課は文字通り、女性を“働き手”として、消費や投資の担い手と位置付け、様々な支援プロジェクトを行う。先日行われた「女性商品企画フォーラム」もそのひとつだ。
これは、「女性商品企画研究会」というプロジェクトに参加した女性グループが、その成果をプレゼンするもので、当日はその取組みを支持する県内企業が提供した研究テーマを基にそれぞれのグループが企業担当者に向け発表した。この研究テーマを提供したのは、住宅メーカーの「アキュラホーム」と、米糠原料の成分を使った関連商品の製造メーカーである「岡安商店」。それぞれのグループが商品化を本気で目指し、様々な企画を発表した。
ヒット商品誕生のカギを握ると言っても過言ではない女性向けの商品は、女性目線で考えられたものが成功しやすいというのは、過去の事例や最近のヒットアイテムを見ても納得がいくものばかりだ。だが、開発秘話などを追っていくと、そこにはさらに重要なカギがあることに気付く。それは、男性・女性を問わず、女性目線の発想に理解を示す柔軟な思考の上司・同僚の存在だ。企業はあくまでも“組織”だ。プロジェクトにはチームが必要であり、決裁権を持つ人間には常に責任が付きまとう。戦略やオペレーションのリスクをいかに回避し、常識にとらわれない決断ができるかどうかがヒット商品を生む土壌を作り出す。
最も埋もれた資源であると言われる「女性」を活躍させるステージを作るには、それを活かすことができる能力を持つ人材を育成することを同時に行うことが重要であり、それを怠れば、将来的に「女性」が“活躍”できているかは非常に疑問だ。「アベノミクス」を支える原動力と期待される「女性力」は、企業の見えない組織内の改革が実は大切なのではないだろうか。(編集担当:北尾準)