ドイツ発のインダストリー4.0やアメリカ発のインダストリアルIoTなど、世界の製造業は今、大きな変革期にある。工場のデジタル化やIoT化によって生産性向上を目指すスマートファクトリーの需要拡大に伴い、工場で活躍している産業機器もより高機能かつ安全なものが求められるようになった。
産業機器といわれても、製造業に携わっていない人たちにとっては、普段の生活の中では見る機会も触れる機会もなく、遠い存在に思えてしまうかもしれない。しかし、実際はそうではない。産業機器は、確かに工場や作業現場の閉鎖的な空間で活躍している機械だが、高度な産業機器が導入されることによって、工場や作業現場の省力化や省人化が進んだり、生産性が大幅にアップし、コストダウンが図れる。その結果、製品の価格にも大きく影響してくるのだ。また、人的なミスを減らすことで品質価値も上がるので、より安全、安心なものを手に入れることができる。我々の便利で快適な生活は、高度な産業機器によって支えられていると言っても過言ではないだろう。
経済産業省による「生産動態統計」によると、2020年の日本の機械産業はコロナ禍の影響を受けて軒並み低調だったが、そんな中でも半導体製造装置・FPD製造装置などの産業機器は、自粛生活や在宅ワークの影響でスマートフォンやPC、データセンター向けの半導体の需要が増したこともあり、前年よりも608億5800万円増となる大きな伸びを見せている。また、産業用ロボットも、ここ数年の自動化需要に加えて、非接触や無人化、省人化への関心の高まりを背景に大幅に需要を伸ばしていることが分かった。
そんな産業機器に今求められているのが、大電流にも対応できる電子部品だ。
AIやIoTを活用した最先端の機能が搭載される産業機器を動作させるためには、それだけ大きな電流が必要になる。大きな産業機器の中の、わずか数ミリの小さな部品に至るまで、大きな電流を扱えて、しかも安全でなければならないのだ。このような技術分野において、日本の電子部品メーカーは世界の同業に比べて強いアドバンテージがある。
例えば、ローム株式会社が5月25日に発表した電源IC「BD9G500EFJ-LA」は、AIやIoT機能などを搭載する先進的な産業機器が求める高耐圧・大電流を両立したものだ。48V の電源系統向けとして業界最高クラスの 80V 耐圧を実現するとともに、MOSFET 内蔵で同クラス最高となる出力電流5A の大電力対応を実現している。大電力が必要になる高速通信規格5Gの通信基地局や今後増えていくことが見込まれる充電ステーションなどの高信頼化、高機能化にも役立ちそうだ。また、同時に発表された24V の電源系統向けの「BD9F500QUZ」は、小型・低背のパッケージ部品でありながら 39V 耐圧と出力電流5A を実現。こちらはFA 機器をはじめ、幅広い先進産業機器の高機能化や小型化への貢献が期待できる。小型で高効率動作なのはもちろんのこと、安全面も非常に優秀で、たとえ雷などによる突発的なサージ電圧を受けても壊れない高い耐圧や、多くの機能を動作させるために大電流への対応を実現できる製品は、産業機器を使用するすべての企業に歓迎されるだろう。
現代社会を支える産業機器。そして、その産業機器を構成する数々の電子部品。第4次産業革命を成功に導くのは、日本発の高度で信頼性の高い技術なのだ。(編集担当:今井慎太郎)