認知症予防には「絵本の読み聞かせ」が有効? 「他者への親切」が脳の炎症を抑える

2021年05月30日 08:19

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絵本などを子どもや家族に読み聞かせすることで脳の萎縮を抑える効果が期待できるという

 新型コロナウイルス対策の切り札として期待されているワクチンの接種が全国で始まっている。

 東京と大阪では、1日で最大1万5000人程度の接種が可能になる大規模接種センターが設置され、初日の5月24日には、東京会場で約5000人、大阪会場で約2500人が接種に訪れたという。

 東京会場では30日までは東京23区に住む高齢者が接種の対象になっているが、ここで一つの問題が浮上している。それは、認知症患者が接種する場合の同意をどうするかという問題だ。

 異例のスピードでワクチン開発が行われて承認されたため、現状では副反応へのリスクも不透明だ。本人の同意を得られないまま事故が起きてしまったら、医療や介護の現場が責任を問われかねない。同意の取り方も明確にされていないために、とくに高齢者施設ではワクチンの接種が進んでいないところも珍しくないようだ。

 総務省統計局調査が公表している2019年のデータによると、65歳以上の高齢者人口は、日本の総人口の28.4%にあたる3588万人。そのうち、およそ630万人が認知症を患っているといわれている。つまり、高齢者の2割弱が認知症患者ということになる。また、将来的には高齢者人口の増加に伴って3割近くにまで増えるとも言われている。もちろん、すべての高齢者が認知症を患うわけではないし、今後、認知症の特効薬が開発されないとも限らない。しかし、今の時点では高齢化が進むほど、認知症リスクが高まることは避けられなさそうだ。

 コロナ禍に限ったことではなく、認知症を患ってしまうと人生に大きな負担となってしまう。若い頃に一生懸命に仕事や子育てを頑張って、ようやく第二の人生をゆっくりと楽しもうとした矢先、認知症になってしまっては目も当てられない。自分自身だけでなく、家族の生活にも影響を与えてしまうだろう。また、近年は65歳以下でも若年性の認知症が増加しているといわれている。とくに今はコロナ禍などで精神的なストレスが多く、脳も疲れやすくなっている。「まだ若いから大丈夫」とは言い切れない。気づいたときにはもう遅かったとならないように、少しでも早い時期から、認知症予防に努めたいものだ。

 認知症の予防には、生活習慣の改善や適度な運動習慣、他者との交流などがあるが、このコロナ禍では、外に出かけたり、誰かと食事や飲みに出かけたりもしにくい。そこでお勧めしたいのが「絵本の読み聞かせ」だ。東京都健康長寿医療センター研究所の検証によると、自分だけで楽しむ読書ではなく、絵本などを子どもや家族に読み聞かせすることで脳の萎縮を抑える効果が期待できるという。読み聞かせの実演だけでなく、絵本の吟味や読む練習などが、適度な緊張感とともに五感を刺激し、記憶力の向上や視覚機能、注意・実行機能の改善につながるというのだ。

 また、認知症の予防として近年注目されている「蜂蜜」や「プロポリス」など、ミツバチ由来の健康成分を研究している、株式会社山田養蜂場 みつばち健康科学研究所 名誉顧問の橋本健博士も、4月に岡山で開催された「第69回 山田養蜂場文化セミナー」に登壇して認知症とその予防策について語っており、その中で「他者にする親切」が、認知症発症原因となる脳の炎症を格段に抑えるというデータを紹介している。いかに相手に分かりやすく、聞きやすく、絵本の世界を楽しんでもらうかを考えて行う「読み聞かせ」は、まさに聞き手を思いやる親切な行為に当たるのではないだろうか。

 ちなみに、山田養蜂場では毎年、自然環境の大切さや生命の大切さ等について共に考えたいという想いから、ミツバチをテーマにした絵本作品を募集する「ミツバチの絵本コンクール」を開催し、その受賞作品を実際に出版している。今年3月にも、受賞作品の一つで、大家族のミツバチ、プックルさん一家を舞台にした「プックルさんちは 大さわぎ」が発売された。子どもに読み聞かせるテーマとしても最適なので、読み聞かせる絵本の選定に迷ったときは、「ミツバチの絵本コンクール」の受賞作品を探してみてはいかがだろうか。(編集担当:今井慎太郎)