2020年度の東京都の企業倒産は1302件でバブル期の1989年度に次ぐ低水準にとどまっているが、その背景には自治体の制度融資などによる資金繰り支援がある。長引くコロナ禍で需要が減少し業績は悪化しているにもかかわらず、区の資金繰り支援により倒産が抑制されているのは間違いない。
6月3日、東京商工リサーチが東京23区のコロナ融資担当者に現状や今後の方向性について取材したレポートを公表している。東京23区ではほとんどの区が制度融資の申請期限を2020年度末に設定していたが、未だコロナの収束は見通せず、中小・零細企業の資金需要が続いているため世田谷区を除く22区は21年度も引き続き制度融資を継続している。
渋谷区では新型コロナ対応の「緊急経営支援特別資金」で融資斡旋を行っている。年明け以降は一時的に申請件数が落ち着きをみせたようだが、年度末には申請が殺到した。4月には減少傾向になったがGW明けからは再び増加に転じているようだ。この特別融資は当初、3月までだったが9月末までの継続が決定された。区の担当者によれば「上限2000万円というまとまった金額で事業者を支援できる区の制度が他になく、終了すると資金繰りに困る事業者が出てくる恐れがある」というのが継続の理由だ。地域的にIT関連や飲食店、アパレル関連の小売業者の利用が多いようだ。
製造業の多い大田区は23区で最も高い5000万円の融資限度額を設定している。担当者によれば、やはり「GW明けから1日2桁台まで増加している」ようだ。利用する企業の業種も「以前は製造業者の利用が多かったが、4月頃から小売・卸売業者からの申請が増加している」と宣言やまん防適用で影響を受ける業種で資金繰りが悪化しているようだ。荒川区では「経済急変対応融資」を新規に創設し、限度額を1000万円から2000万円に引き上げ、金利は0.3%に下げた。融資限度額を拡充した江東区の担当者は「多くの事業者で、前年度に開始した新型コロナウイルス感染症対策資金融資の1年間の据え置き期間が5~6月には終了する。一方で、売上が戻っておらず返済が難しい企業も多いため、借換を可能にし、事実上のリスケができるようにした」という。飲食店やサービス・小売業が多い中央区の担当者は「飲食店に限らず事業者の置かれた状況は悪化している」という。
東京商工リサーチの4月の調査では、「債務に過剰感がある」中小企業の割合は36.3%で、過剰債務が問題となるなか区の担当者も支援の方法に頭を悩ませているようだ。(編集担当:久保田雄城)