ワクチン接種が安全で円滑に進むことを願って・・・集団接種会場にオフィスを提供する企業も

2021年06月13日 08:23

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新型コロナワクチンの集団接種会場に施設を提供する企業が増えている中、半導体メーカーのロームは京都駅前の自社オフィス1階ロビーを提供することを発表した。

 新型コロナウイルス禍収束への切り札として期待されているワクチン接種。厚生労働省などの発表から推計すると、2012年6月8日の時点での1回目の接種者は約1450万人、 2回目まで接種した人は約486万人を超えた。9日に行われた党首討論では、菅総理大臣がすべての希望者が10月から11月にかけてワクチンの接種を終えられるよう取り組む考えを示したが、未だ地域によっては接種会場の予約すらも取りにくいと言われる中、現状のペースではいささか難しいようにも思える。6月21日からは職場や大学などでの職域接種も始まる予定だが、すべての希望者が一日も早く2回の接種を終えるためには、接種会場の増設なども必要となってくるだろう。

 そんな中、自社が所有する施設等を集団接種会場として提供する企業も増え始めている。

 例えば、自動車メーカーのトヨタは愛知県豊田市と連携協定を結び、同社に所属する産業医や看護師ら延べ計450人を接種会場に派遣しているほか、トヨタ堤工場やトヨタスポーツセンターなどの施設の会場提供や、生産現場のノウハウを応用した接種会場の運営支援などを行っている。

 また、イオンも医療従事者への優先接種が始まった2月にはすでに、全国に展開する約290カ所の大型商業施設を接種会場として自治体に提供することを発表。大型施設だけに充分な広さがあるのはもちろん、駐車スペースや電源なども確保されているので利用者の利便性も高い。とくにイオンモールなどは住民の認知度も高いことから、高齢者にも分かりやすく、好評のようだ。

 そしてついにオフィスを集団接種会場に提供する企業も現れた。

 京都市に本社を置く半導体メーカーのロームは7日、京都市と医療法人創健会・西村診療所に協力し、自社ビルの一階ロビーを集団接種会場として提供することを発表した。期間は、6月14日~30日、7月5日~21日のうち月曜日~土曜日の9時~16時。1日あたり最大で400人の接種に対応する予定という。

 工場や福祉施設などを会場として提供する企業は多いが、現役で稼働しているオフィスを提供するのは全国的に見ても珍しい。同社では、緊急事態宣言下での出社率を3割に抑え、来客も原則禁止としているというが、それでも思い切った決断だ。会場となるビルは、京都の玄関口である京都駅の前。京都市民にとって最も交通アクセスの良い場所の一つだ。「微力ではあるが、地域のワクチン接種が安全で円滑に進むことを願っている」という。また、同社では8日、職域接種の申請開始に合わせて、いち早くその手続きも行っている。こちらも本社の会議室を接種会場として、京都市内の拠点で働く従業員およそ2700人を対象に接種希望者を募り、今月末からの接種開始を目指すという。

 未だ世界中を混乱に貶めている新型コロナウイルス禍を収束させるには、行政だけでなく民間企業の協力が重要だ。そして、ワクチン接種を受ける側の住民も、円滑に進むように協力する必要があるだろう。すべての国民が一日も早く、笑顔で生活を送れるようになるために、官民一体の取り組みに期待したい。(編集担当:藤原伊織)