土地利用規制法成立も政府裁量大きすぎ運用課題

2021年06月17日 06:12

 運用に政府白紙委任の部分が多く、慎重審議が必要だった自衛隊基地、原発周辺、国境離島などの「土地利用状況調査および土地利用規制法」が参院本会議で16日午前2時28分、自民、公明、日本維新、国民民主などの賛成多数で可決・成立した。

 重要施設周囲1キロや国境離島を「注視区域」に指定し、土地建物の所有者の国籍、氏名、住所、利用実態などを政府が調査できる。また政府が特に重要性が高いとするものを「特別注視区域」に指定し、一定面積以上の土地建物の売買に関して事前に届け出ることを必要とした。

 法を巡っては参院内閣委員会で参考人として答弁した馬奈木厳太郎弁護士が戦前の『要塞地帯法』の条文を取り上げ「何人といえども要塞司令官の許可を得るに非(あら)ざれば要塞地帯内水陸の形状を測量、撮影、模写、録取することを得ず、と(規定し、要塞地帯法でさえ)何をしてはいけないかを明確に書いている」と指摘。

 そのうえで「今は戦後だ。すべてを閣議決定、政令府令(で決める)。それなら国会はいらない。みなさん、内閣委員の一人一人が問われると思う。こういう法律を作ると簡単にはなくせない。今ならまだ間に合うと思う」と成立させるべきではないと強く提起していた。

 政府裁量が大きすぎる法だとして反対してきた立憲の小西洋之参院議員は16日ツイッターで「衆院本会議では立憲は反対討論さえできなかったが、参院では委員長解任案の提出等をして頑張った。しかし、内容的にズタボロで効果も殆ど全くない法案を廃案に追い込めなかった立憲の力量不足は深く反省しなければなりません」と成立させてしまったことに悔しさをにじませた。

 また立憲の石川大我参院議員も「土地規制法案が可決されたことは痛恨の極み。白紙委任が多く、規制の範囲が明確でない、市民弾圧法」と問題を指摘。そのうえで「政権交代で廃止すべき法律」であるとした。法の廃止に取り組む必要をあげた。

 社会民主の福島みずほ党首は「違憲立法の成立に強く抗議する」と発信。福島氏は法に反対する国会内集会で「基地周辺1キロ以内に住んでいるだけで住民は警察や自衛隊の情報保全隊によって監視され、基地反対派の人々に対する調査にも応じなければならない。地域版の治安維持法だ」と法の危うさをあげていた。共産の田村智子副委員長も内閣委員会で「法の体をなしていない」と強く抗議していた。(編集担当:森高龍二)