新型コロナパンデミックに対しては先進国を中心にワクチン接種が開始され、経済の先行きにも明るい見通しを表明するものも増えてきた。アメリカのバイデン大統領がワクチン接種を加速させることを表明したため、アメリカ経済は個人消費の回復をも期待した回復の動きが出ている。しかし、一方でイギリスやイスラエルなどワクチン接種が進んだ国においても感染者が再び増加傾向に向かうなど、ワクチンのみではコロナ禍の完全な終息は難しいという懸念も出始めている。日本でも徐々にワクチン接種は進んでおり、ワクチン効果が期待どおりならば秋以降の個人消費の回復が期待されてきた。しかし、企業の見方は必ずしも楽観的では無いようだ。
6月21日、東京リサーチが16回目になる「新型コロナウイルスに関するアンケート調査」の集計結果レポートを公表している。6月の上旬にインターネットを通じて実施されたこの調査の中で「コロナの収束時期の見通し」と「廃業検討率」について聞いているが、企業の回答は再び慎重なものになってきているようだ。
「コロナ禍が収束するのは、いつ頃だと考えるか」という質問に対しては、「年内」と回答した企業は9138社中の1620社で17.7%、「2022年1~3月頃」と答えた企業が29.1%、「22年4~6月頃」が28.3%、「22年7月以降」が24.8%となっている。「来年の4~6月頃」が最も多く、これに「来年7月以降」を加えると53.1%と半数以上の企業がこの先1年以上コロナ禍が続くと見込んでいる。
「コロナ禍の収束が長引いた場合、『廃業(すべての事業を閉鎖)』を検討する可能性はあるか」という質問に対しては、「ある」と答えた企業の割合は全企業で7.17%となった。規模別には、資本金1億円以上の大企業では1.01%であるのに対して資本金1億円未満の中小企業では8.28%と高くなっている。廃業検討率は昨年9月に全企業で7.54%、中小企業で8.82%と最も高くなったが今年に入り減少傾向となり、今年3月には全企業で5.88%、中小企業で6.77%まで低下した。しかし、その後4月から増加傾向に転じている。業種別では「宿泊業」36.8%、「その他の生活関連サービス業」36.2%、「飲食店」33.8%で「ある」回答が多くなっている。
レポートでは「今後は長期的な不振にあえぐ業種・業界に対する転業や廃業支援などの取り組みも必要になっている」と結んでいる。(編集担当:久保田雄城)