コロナ禍、消える福祉事業所。人手不足にコロナ対策の負担増で事業維持できず

2021年03月19日 06:39

画・コロナ禍、消える福祉事業所。人手不足にコロナ対策の負担増で事業維持できず。

東京商工リサーチが「障がい者福祉事業倒産と休廃業・解散調査(2020)」。20年の休廃業は107件、前年比0.7増加

 長期化するコロナ禍で障がい者福祉事業所も窮地に立たされているようだ。2009年に「障害者雇用促進法」が改正され、その後人手不足とも相まって障害者の雇用機会は拡大している。13年には「障害者総合支援法」の成立を受け、民間企業が障害者福祉事業へ進出するケースが増大した。こうした中、補助金目的とも疑われるずさんな経営計画の参入事業所も少なくなく、14年以降、放漫経営を事由とした倒産・休廃業・解散の件数は増加傾向で推移している。

 3月4日に東京商工リサーチが「2020年・障がい者福祉事業倒産と休廃業・解散調査」の結果レポートを公表している。これによれば、2020年の「障がい者福祉事業」の倒産と休廃業・解散の合計件数は127件で、前年と比較すると6.6%の減少となった。これは13年以来、7年ぶりの減少だが、19年に引き続き2年連続で100件を上回る高い水準だ。

 内訳をみると、倒産が19年の30件から20年の20件と大きく減少しており、これが全体の件数を押し下げているが、休廃業・解散のみでは20年に107件と前年の106から増加し最多を更新している。新型コロナの各種支援を受けながらも事業継続が難しくなった事業者が体力のあるうちに廃業等を選択するケースが増えているようだ。

 倒産件数が大きく抑制された要因は新型コロナ支援策の効果によるものとレポートでは見ているが、倒産した20件のうち8件の倒産事由が事業上の失敗や販売不振などの放漫経営となっており業界の経営体質に課題があることを示唆している。さらに、倒産の20件すべてが従業員10名未満の零細事業所となっており、小・零細規模の事業者も長期的で健全な運営を維持できるような支援制度の拡充も課題といえる。

 負債額別にみると、倒産した20件すべてが1000万円以上5000万円未満で「障がい者福祉事業」の倒産の小規模化が進んでいる。資本金別でも、5000万円以上の発生はなく、最多は100万円以上500万円未満が8件と全体の4割を占め、NPOなど個人企業他が5件と続いている。

 コロナ禍では感染防止対策が欠かせず、こうした負荷が景気低迷・人手不足にある障がい者福祉事業者にはさらなる重石となる。生産性の改善がすでに課題となってきたが、今後、報酬改定を契機に競合が激化し、小規模を中心に倒産や休廃業の動きは加速しそうだ。(編集担当:久保田雄城)