コロナ禍の2020年の全国倒産件数は前年を下回った。これは倒産防止の各種支援策が功を奏したからだと言われている。今年1月から5月までの企業倒産も2503件と政府や自治体、金融機関の資金繰り支援の効果で前年同期を22.2%下回っている。しかし、無利子・無担保融資など貸付型の支援や特例リスケジュールなどのリスケ型支援は業績回復が遅れる中で過剰債務を誘発しているようだ。
6月14日、東京商工リサーチが「過剰債務に関するアンケート調査」の集計結果レポートを公表しているが、これによれば、企業に「債務の過剰感」を聞いた結果、「コロナ前から過剰感」ありと回答した企業の割合は13.0%で、「コロナ後に過剰感」は18.6%、両者を合わせると31.6%の企業がが「過剰債務」を感じているようだ。
規模別に見ると、大企業で「過剰債務」と回答した企業は15.4%であるのに対して、中小企業では34.2%と3社に1社が過剰債務を感じているという結果となった。業種別に見ると、「過剰債務」と回答した企業の割合が最も高かったのは、飲食店の77.1%で、次いで宿泊業の76.6%、旅行や葬儀、結婚式場などを含む「その他の生活関連サービス業」の73.7%、道路旅客運送業の72.0%と続いている。
「債務過剰」の内容を聞いた結果では、「金融機関からの借入」の81.6%がダントツでトップとなった。規模別では、大企業では70.6%であるのに対し、中小企業では82.4%と高くなっている。また、「人件費・家賃」、「税金・社会保険料」をあげる企業も多く、コロナ禍でビジネス環境が変化し、固定費、変動固定費が経営上のネックとなっているようだ。資金繰り支援策は、企業の一時的な資金繰り緩和に大きく寄与した一方で、業績回復が遅れている中、バランスシートの肥大化を引き起こしている。
業績回復が見込めない中、ウイズコロナに適用するための「事業再構築補助金」など経済の再活性化に向けた支援も行われているが、過剰債務の解消に向けた手立ても必要になってきている。「債務過剰」の要因は、金融債務だけでなく、人件費や家賃、税金・社会保険料、保証債務、不利な取引条件・契約など多岐にわたっている。こうした中小企業の置かれた環境に則した、資金繰り支援だけではない多様な支援が求められている。(編集担当:久保田雄城)