コロナの長期化、従業員の観光業離れ。低賃金に感染リスクが追い打ち

2021年07月14日 06:43

画・コロナの長期化、従業員の観光業離れ。低賃金に感染リスクが追い打ち。

やまとごころキャリアが「観光業界で働くことへの意識調査」。観光関連従業者の転職「観光業界を希望する」は45.3%で半数以下

 コロナ禍が1年以上長期化している。観光業はインバウンド需要を失い深刻な状況にある。飲食業やアパレル業などもコロナの長期化で厳しい経営環境の中にあるが、ECやテイクアウトなど様々な努力で業績の落ち込みを減少させようとしている。しかし、観光業はインバウンド消失など需要それ自体が減少し、経営努力にも限界があると言える。ワクチン接種が需要回復への希望となるが、各種調査によればワクチン接種によって直ちに元の生活に戻れると考えている者は少数派だ。長引く低迷の中で観光業から人材の流出の兆候も出てきているようだ。

 インバウンド専門の求人サイト「やまとごころキャリア」の運営企業やまとごころキャリアが6月にサイト登録会員を対象に「観光業界で働くことへの意識調査」を実施し、6月3日にその結果レポートを公表している。これによれば、「転職する際の希望業種」を聞いた結果では、「観光業を希望する」と回答した者の割合は45%、「観光業以外で語学を活かせる業界」が34%、「観光業以外で接客術を活かせる業界」3%、「上記3つ以外の業界」13%、「転職予定なし」5%という結果であった。まとめると「観光業を希望」する者の割合は45.3%で、「他業界を希望」する者は50.0%となり、半数が転職する場合に他の業界に移ると回答している。

 「観光業界を希望する」と回答した者を年代別に見ると、「20代」が43.6%、「30代」32.3%、「40代」46.2%、「50代」47.9%、「60代」69.7%となっており、「20代」や「30代」の若い世代で観光業への希望が少なく他の業界への転職希望が高くなっている。年収別に見ると、「200万円以下」が50.0%、「200~400万円」で41.8%、「400~600万円」52.0%、「600万円以上」37.5%と年収の高い者では観光業への転職希望は少ないようだ。

 レポートでは「新型コロナの影響を受けて別の業界への転職を考える方が多くなり、観光業界での就業に消極的になっていることが分かる」としている。米国でも同様の傾向がすでに出ており、宿泊・飲食業界の就業者が、もともと低賃金の上に接客によるウイルス感染を懸念していることが原因と見られている。一方で「ワクチン接種が進む米国では、観光が劇的な復活を遂げている。また、採用にかけるコスト、人件費も上昇している。おそらく、数カ月遅れで日本も同様の状況になると予想される」とレポートでは指摘されている。(編集担当:久保田雄城)