米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)が特設サイト上で公開している集計によると、2021年7月17日(日本時間17時)現在、新型コロナウイルス・パンデミックの世界の状況は累計で、感染者189,997,805人、回復者125,063,879人、死者4,082,335人となっている。
日本でも、東京五輪を目前に控えた7月12日から、4回目となる緊急事態宣言が発出されるなど、未だ各地で混沌とした状況が続いている。7月から全国銀行協会の会長に就任した三井住友銀行の高島誠頭取も、15日に開かれた就任後初めての記者会見で「日本の経済情勢は一進一退の状況。正常化までの期間は見通しがたい」と述べるなど、専門家でも先を見通すのは難しい状況だ。
そんな中ではあるものの、次の経済成長を見据えた企業の動きも各方面で活発化し始めている。
例えば、産業機器や自動車向けのパワー半導体やアナログICの分野でグローバルに活躍している電子部品メーカーのロームは7月14日、新たな事業創出の加速に向けてCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)活動を開始。スタートアップ企業を対象に50億円の投資枠を新設することを発表した。同社は以前からベンチャー企業との協業や業務提携のほか、大学を対象にした研究公募や共同研究に積極的に取り組んできた。社内外の技術や知恵を融合するオープンイノベーション活動を更に加速すべく、今年1月にはCTO室を新設。CVC活動全般を担い、中期経営計画「MOVING FORWARD to 2025」の成長戦略の一つである「将来に向けた新たな成長事業の構築」の一環として、社会課題の解決や10年先の成長の種となる新規事業の創出を目指すという。ローム以外にも、様々な企業がCVC活動を行っている。企業にとっては新しいアイデアを取り入れる機会であり、スタートアップ企業にとっては資金調達のほか企業の設備や知見の協力を得られる機会だ。双方が協力し、経済成長へ向けた開発が行われることに期待したい。
コロナ禍で大打撃を受けている観光業界でも、復活を目指す動きが始まっている。
JR九州は7月1日、「さあ!九州を元気に。」プロジェクトを開始した。同プロジェクトでは、飲食や観光、宿泊業など苦境と戦う店舗や団体を紹介するポスターを制作。九州各県の主要駅を中心に7月12日から順次掲出している。最終的には1千の団体の紹介を目指しているそうで、「コロナと闘う」熱いメッセージが、地元ではすでに話題となっているようだ。
また、JR九州は西日本鉄道や天神・博多エリアの商業施設18施設とともに、JR九州の列車および西鉄電車・バス、各商業施設の特典を掛け合わせた連携チケット「天神・博多 乗レール買エールチケット」の販売を7月22日から開始。チケットはトヨタファイナンシャルサービスが提供するマルチモーダルモビリティサービス「my route」アプリ内で購入できる。お得なチケットで地域の魅力を発信し、まだまだ回復に時間がかかりそうな個人旅行の需要喚起に弾みをつけたい考えだ。
7月23日から東京五輪・パラリンピックが開幕したが、大和総研の試算によると大会の経済効果は当初の試算から大幅に減少し、約3500億円にとどまる見通しだという。対新型コロナの切り札と期待されているワクチン接種も、未だ劇的な効果としては現れていない。本来ならば、夏休みやお盆のレジャーで活気づく季節だが、去年に引き続き、今年も控えめな状況だ。日本はまだまだ苦境の最中にある。しかし、そんな中だからこそ、復活を目指す動きには勇気と希望を与えられる。また、そういう動きのある企業や場所には人が注目し、集まるものだ。各企業のの前向きな活動が成功し、日本経済復活に向けての突破口になることを期待したい。(編集担当:藤原伊織)