7月8日に公表された東京商工リサーチの「大手居酒屋チェーン店舗数調査」のによれば、大手居酒屋チェーンの店舗はコロナ禍の1年余りの間に1048店減少し、年末までにさらに1000店舗程度が閉店になると見込まれている。居酒屋チェーンのみでなく他の業種でもコロナの影響で収入が減り事業縮小を余儀なくされている企業は少なくない。これによる雇用の喪失は相当のもので、政府もコロナ禍で減収となった企業の雇用を守るために雇用調整助成金の特例措置を講じ雇用維持に努めている。
8月3日に東京商工リサーチが上場企業の雇用調整助成金の申請・受給状況について調査を行った結果レポートを公表しているが、これによれば6月末時点での上場企業の雇用調整助成金の受給額は昨年11月末と比べ約2倍に増加している。6月末までに開示された上場企業の決算資料によると助成金の計上・申請が判明したのは807社で上場企業全体の20.9%に達する。計上額は判明した715社合計で4666億7750万円にのぼり、昨年11月末は2414億5420万円であったので、約半年間で93.2%の増加、約2倍に達したことになる。
申請の判明した807社を業種別に見ると、製造が321社で最多、計上額は1003億4860万円にのぼる。次いで、観光などのサービスと外食を含む小売がともに150社と続き、計上額はそれぞれ960億3260万円、840億500万円となっている。業種別の利用率は、小売が43.1%でトップ、次いで運送が39.2%、サービス28.4%、製造は21.5%となっている。やはり新型コロナの影響が大きい業種で申請割合が高くなっている。計上額では、航空会社・鉄道を含む運送の49社が1469億4850万円と最多となっており、長引く外出自粛による需要低迷が強く影響しているようだ。
8月2日には埼玉、千葉、神奈川、大阪にも緊急事態宣言が発令されるなど対個人サービス消費関連を中心とした企業の事業環境には再び不透明感が漂い始めており、雇用調整助成金の計上額はさらに増勢をたどるとみられる。感染拡大は続いておりコロナの影響が大きい業種では業績回復の目途が立たず特例措置の継続を望む企業は少なくない。冬の感染流行は夏の10倍とも言われている。レポートでは「冬以降の感染シナリオを織り込んだ“雇調金プラス”の雇用維持策の必要性が現実味を帯びている」と結んでいる。(編集担当:久保田雄城)