コロナ禍の長期化により多くの企業が経営体力を喪失し雇用維持が困難な状況に直面しているようだ。コロナ禍1年半が経過し業績回復が見通せない中で雇調金(雇用調整助成金)の申請・受給額が急増している。雇調金はコロナの影響で事業活動が縮小し、売上高等が前年比5%以上減少し、休業手当を支給している全業種の事業主が対象であるが、雇調金申請の増加はこうした状況におちいった企業が増加していることを意味する。
9月2日、東京商工リサーチが2020年4月1日から21年7月31日に雇調金の申請・受給を情報開示した上場企業を対象とする「雇用調整助成金調査」の結果レポートを公表している。レポートによれば、7月末までに開示された決算資料で、雇調金の計上・申請が判明した上場企業は814社で、上場企業3855社の21.1%を占め、6月末から7社増加している。
計上額の総額は判明した723社の合計で5190億4450万円にのぼり、6月末から523億6700万円増加し、増加率は1カ月で11.2%増と急増している。20年11月末は2414億5420万円であったので、直近8カ月間で2.1倍に達したことになり、今年に入ってから計上額の増加が加速している。計上額を押し上げているのは鉄道、航空などの交通インフラ、外食、サービス、アパレル小売など業績回復が見通せない業種の企業が中心で、年度をまたいだ雇調金受給が増加している模様だ。特に外食や鉄道で100億円以上の計上が6月末から4社増加している。
計上が判明した814社の計上額の構成を見ると、「1億円未満」が286社で全体の35.1%を占め最多、次いで「1億円以上5億円未満」が273社で33.5%と3社に1社を占めている。6月末との変化を見ると、増加しているのは「1億円未満」が6月末の282社から7月末の286社へ、「1億円以上5億円未満」が同272社から同273社、「10億円以上50億円未満」同85社から同87社へ、「100億円以上」が同5社から同9社へと4社増加し、大口の増加率が目立つ。一方、「5億円以上10億円未満」は同61社から同59社、「50億円以上100億円未満」同10社から同9社へと減少している。
レポートは「当面は消費活動への打撃は避けられず、雇調金の計上額は今後も増えるとみられる」と見込んでいる。ワクチン効果や医療体制拡大による早期の経済活動正常化が待望される。(編集担当:久保田雄城)