岸田文雄総理は8日、国会で所信表明演説を行い、憲法改正については「改正の手続きを定めた国民投票法が改正されました。今後、憲法審査会において各政党が考え方を示した上で、与野党の枠を超え、建設的な議論を行い、国民的な議論を積極的に深めていただくことを期待します」と憲法審査会で建設的議論を期待するとの発言にとどめた。
岸田総理は自民党総裁選から「新しい資本主義の実現」を提起してきたが、所信表明演説でも「新自由主義的な政策については、富めるものと、富まざるものとの深刻な分断を生んだ、といった弊害が指摘されている」として「成長と分配の好循環とコロナ後の新しい社会の開拓をコンセプトに取り組む」姿勢を強調した。岸田総理は「分配なくして次の成長なし」とアピールした。
岸田総理は「新しい資本主義実現会議を創設し、ビジョンの具体化を進める。新しい資本主義を実現していく車の両輪は成長戦略と分配戦略。成長戦略の第1の柱は科学技術立国の実現であり、学部や修士・博士課程の再編、拡充など科学技術分野の人材育成を促進。世界最高水準の研究大学を形成するため、10兆円規模の大学ファンドを年度内に設置。デジタル、グリーン、人工知能、量子、バイオ、宇宙など先端科学技術の研究開発に大胆な投資を行う。民間企業が行う未来への投資を全力で応援する税制を実現していく」と述べた。
分配戦略での「第1の柱は働く人への分配機能の強化だ」と述べ「企業が長期的な視点に立って、株主だけではなく、従業員も、取引先も恩恵を受けられる『三方良し』の経営を行うことが重要」と訴えた。そして「非財務情報開示の充実、四半期開示の見直しなど、そのための環境整備を進める。労働分配率向上に向けて賃上げを行う企業への税制支援を抜本強化する」とした。一方で具体策の提示はなかった。(編集担当:森高龍二)