新型コロナウイルス感染症の流行で社会は大きく変容した。働き方改革の中で以前より制度は設けられていたものの利用者が数パーセント程度であったテレワークも昨年春の最初の緊急事態宣言の発出により大都市では4割程度まで利用者が拡大した。
また、「風邪をひいたくらいでは休めない」という風潮にも変化が見られる。日本の企業・組織などでは精神論的な風潮が強く、風邪などで体調が悪化した場合でも無理をして出勤・登校する習慣があるが、これは体調を崩した本人にとってマイナスなだけでなく、周囲の者にウイルスや細菌を感染させるリスクを高める不合意な習慣だ。これについては、政府や専門家からも風邪症状があった場合、職場や学校へ行かないように呼びかけがあるなど、新型コロナの流行は国民の感染症に対する関心を高め、上記のような非科学的で不合理な習慣を改める契機となったと言える。しかし、コロナ以前よりは風邪症状で出勤・登校する者は減ったものの、未だ半数近くの者が風邪の症状があっても出勤・登校しているようだ。
国立国際医療研究センター病院・AMR臨床リファレンスセンターが8月に全国の10代以上の男女700名を対象に「抗菌薬・抗生物質に関する意識調査」を実施、10月1日にその結果レポートを公表している。これによれば、「鼻水、咳、のどの痛み、37度の熱などの症状があった場合、学校や職場を休むか」という質問に対して、「休む」と答えた者の割合は50.6%で、コロナ禍以前の2019年8月の結果と比較すると13.5ポイント多くなっている。しかし一方で「休みたいが休めない」と答えた者が23.9%、「休まない」が25.6%となっており、両者を合わせると49.5%と約5割の者が結果的に「休まない・休めない」と回答している。コロナ以前に比べ1割強ほど「休む」者が増えたというものの、未だ「風邪や体調不良の時は休む」という習慣が一般化したとは言いがたい結果だ。しかし、「休む」と「休みたいが休めない」を合計し「休むべき」と認識している者とすると74.5%になり、職場のシステムや働き方の改善も必要なようだ。
「今後もパンデミックは起こると思うか」に対しては、「思う」が71.9%、「思わない」が6.4%、「わからない」21.7%で、多くの者が将来新たなパンデミックが起こりうると思っている。体調が悪化した際に「休める」社会を作るための工夫が必要だ。(編集担当:久保田雄城)