コロナ禍の長期化で企業の経営体力は限界に近づいている。政府の支援策が奏功し全体として倒産件数は低水準で推移してきたものの、今年に入ってからコロナ関連の倒産は増加傾向で推移し、10月も100件超えの高水準となっている。倒産の多くは先行き不透明の中、債務返済額をカバーできる売上回復が見込めず事業の継続自体を断念する「あきらめ型倒産」だ。しかし、このところワクチン接種の普及や感染者数の急激な減少の影響からか先行きに明るい見通しを持つ企業が小幅ながら増加傾向のようだ。
10月21日、東京商工リサーチが10月上旬に実施した「新型コロナウイルスに関するアンケート調査」の結果レポートを公表している。これによれば、中小企業の「廃業検討率(廃業を検討する可能性ありと回答した企業の割合)」は6.4%で、昨年8月の調査開始以降で最低となった。一方、再生支援協議会や事業再生ADR、民事再生法などを活用した「抜本再生」の検討可能性について聞いた結果では、「ある」と回答した中小企業の割合は6.9%で、前回8月調査の5.6%より1.3ポイント上昇し、同質問をした3回の調査で最高となった。
廃業検討率の推移を見ると6月調査で8.3%と今年最多を記録した後、前回8月調査では7.6%、そして今回の6.4%と明確な改善傾向を示している。しかし、業種別に見ると、「飲食店」が35.7%、「織物・衣服・身の回り品小売業」と「道路旅客運送業」がともに25.0%、「宿泊業」24.4%とコロナの影響が直撃した業種では未だ高水準だ。
中小企業に「コロナ禍が収束する時期をいつ頃と見込んでいるか」聞いた結果では、「2021年内」は3.5%のみで、「22年1~6月」が29.9%、「22年7~12月」が25.3%、「23年1~6月」12.0%、「23年7~12月」18.9%、「24年以降」10.5%となっている。来年22年中に収束を見込んでいる企業の割合は55%と半数を超えており、近い将来の収束を見込む企業の増加が廃業検討の減少と抜本再生検討の増加につながっていると思われる。しかし、収束が23年以降まで長引くと見込む企業も41%と4割を超えており、今後もしばらくは事業継続を断念する「あきらめ型倒産」が高水準で推移する可能性は高い。ワクチン接種の普及等によって明るい兆しが見えてきたものの、今後は事業再生支援の必要性がさらに高まってくると思われる。(編集担当:久保田雄城)