新型コロナの感染者数は急激に減少している。コロナ禍は既に1年半以上を経過しているが、流行の波は春、夏、冬と約4カ月周期で起こり、波と波の間の谷底は増加傾向で推移してきた。しかし、今回の収束は既に前回の谷底を下回っている。何か大きな構造変容が起きているようだ。その要因が何なのかは、今のところ専門家も不明としているが、ワクチン接種の普及が一定の効果を見せていることは誰もが認めるところであろう。
5月31日の野村総研レポートがワクチン接種率の計画から予測したとおり、9月上旬には鮮明な感染者の減少となっている。このワクチン効果とも考えられる感染者数の急減で人々の消費行動の回復が期待される。特に接種率の高いシニア層での外出機会の増加と積極的な消費行動が期待されるが、未だシニア層は外出・消費行動に対して慎重な態度を見せているようだ。
経営コンサルタントのペンシルが、感染者減少が鮮明となった9月上旬に自社のシニアモニターの男女188名を有効サンプルとして実施した「新型コロナウイルスの影響によるシニア消費動向調査」の結果レポートを10月5日に公表している。これによれば、9月の調査時点で「ワクチンを2回接種した」と回答した者の割合は85%となっており、「1回だけ」が5%なので、現在は9割を超えていることになる。
接種完了者にワクチンを接種したことによる「安心/不安」の変化について尋ねた結果では、「とても安心している」は10%のみで、「まあ安心している」が54%、両者をあわせると「安心している」は64%にとどまった。レポートでは「ブレークスルー感染のニュースによる感染不安が影響していると思われる」と分析している。 感染対策に対する意識の変化については、「昨年同様に注意している」が65%、「より注意して外出を自粛」が19%、両者を合わせると84%となり、レポートは「2回接種後もかなり不安を感じている」としている。
「最近の消費額の変化」については、「変わらない」が53%で最も多く、次いで「減った」が30%で、両者を合わせ8割超が未だ消費に消極的で、「増えた」は17%と2割未満にとどまった。「外出の変化」についても「増えた」との回答は18%のみで、「変わらない」と「減った」の合計は82%となっている。レポートは「シニアの不安はワクチン接種では解消されていない」と指摘しており、当面はワクチン効果による消費の大幅な回復は見込めない模様だ。(編集担当:久保田雄城)