京都の電子部品関連4社の中間決算 xEVで稼ぎ、5Gで稼いで通期業績上方修正相次ぐ

2021年11月07日 09:34

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世界的な「脱炭素」への流れがxEV(電気駆動機構を有する自動車)需要を高め、産業機器の省エネ需要にも波及

 京都府に本社を置く日本電産、ローム、村田製作所、京セラの電子部品「京都4社」の4~9月期(第2四半期)中間決算が11月1日に出揃った。世界的な「脱炭素」への流れがxEV(電気駆動機構を有する自動車)需要を高め、産業機器の省エネ需要にも波及。それに加え通信機器での「5G」向け需要が本格的に立ち上がり、コロナ禍でのリモートワークもパソコン需要を押し上げた。そんな活況のもと、4社とも中間期の業績は当初予想を上回った。さらに、日本電産、ローム、京セラは通期業績見通しを上方修正し、ローム、京セラは期末予想配当を増配した。自動車向け需要、産業機器需要、5Gスマホ需要といった半導体市場の活況を背景に、各社とも下半期から来期にかけて積極投資に動いている。

■日本電産はロックダウン、半導体不足による自動車減産の影響を吸収

 日本電産の4~9月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上高は前年同期比21.1%増の9106億円、営業利益は30.4%増の901億円、税引前利益は33.6%増の881億円、四半期純利益は38.6%増の676億円だった。いずれも当初業績予想を1割以上上回った2ケタ増収増益と非常に好調で、増益幅は30%を超える。中間配当は前年同期と同じ30円で据え置き。4~9月期最終利益の通期見通し(上方修正済み)に対する進捗率は45.6%である。

 カテゴリー別では、創業以来の製品グループ「精密小型モータ」は東南アジアでのコロナ禍のロックダウンによる減産の影響をもろに受け、外部売上高8.2%減、営業利益30.2%減と縮小した。その中にあってパソコンやゲーム機用のファンモーターは堅調だった。一方、冷蔵庫のコンプレッサー、空調機器のモーター、工場や倉庫内の搬送ロボット向けのモーターのような「家電・商業・産業用」は外部売上高38.3%増、営業利益84.0%増と非常に好調で、最重点分野の「車載」は外部売上高32.2%増、営業利益89.6%増の大幅増益を記録している。世界的なxEV(電気駆動機構を持つ自動車)需要の高まりが、ベトナムなど東南アジアでのロックダウンや、半導体など電子部品の調達難で自動車が減産した影響を吸収。「WPR4」プロジェクトによる原価低減の企業努力も増益に寄与した。

 通期業績見通しを上方修正し、売上高は1000億円引き上げて前期比11.2%増の1兆8000億円、営業利益は100億円引き上げて18.8%増の1900億円、税引前利益は100億円引き上げて21.0%増の1850億円、当期純利益は80億円引き上げて21.4%増の1480億円とした。想定為替レートは1米ドル=105円、1ユーロ=117円で変更なし。期末配当予想は前期と同じ30円、予想年間配当も60円で据え置きとしている。

 オンライン決算説明会で永守重信会長は、2030年に世界シェア4割以上を目指している電気自動車(EV)用駆動モーターについて、モーターとギアを組み合わせたトラクションモーター「イーアクスル」の販売台数予想を280万台から350万台に上積みした。工場を中国とセルビアで建設中だが、「中国でもう1カ所と北米でも建設する予定」と話し、グローバルな投資意欲はますます旺盛だ。

■全分野が増収増益のロームは積極投資をさらに加速する

 ロームの4~9月期決算(日本基準)は、売上高は前年同期比32.5%増の2226億円、営業利益は172.0%増の345億円、経常利益は220.9%増の378億円、四半期純利益は145.9%増の308億円という大幅増収増益を記録した。前年同期が大幅減収減益だった反動もあるが、主力のLSI、半導体素子分野の売上が大きく伸び、特に利益で当初見込みを大きく上回って着地した。4~9月期の最終利益の修正済みの通期見通しに対する進捗率は60.4%ある。中間配当は前年同期から据え置きの75円としている。

 セグメント別は全分野で増収増益。LSIの売上高は前年同期比27.1%増、セグメント利益は291.1%増。ステイホームやテレワークで家電、事務機など民生用機器市場が予想外に好調だった。半導体素子は売上高42.5%増、セグメント利益101.0%増。トランジスタ、ダイオード、パワーデバイスの自動車、産業機器向け需要が拡大している。モジュールは売上高3.7%増、セグメント利益67.9%増。その他の分野は売上高55.6%増、セグメント利益462.2%増。自動車向けの抵抗器が増収に寄与し、パソコン向けタンタルコンデンサも好調だった。

 通期業績見通しを上方修正し、売上高は400億円引き上げて前期比22.3%増の4400億円で過去最高、営業利益は140億円引き上げて63.7%増の630億円、経常利益は180億円引き上げて62.3%増の660億円、当期純利益は170億円引き上げて37.8%増の510億円とし、減益予想が増益予想に変わった。下期の想定為替レートは1米ドル=110円。予想期末配当は10円増配して前期比10円増の85円とし、予想年間配当は前期比10円増配の160円としている。

 ロームの通期の設備投資計画は700億円だが、4~9月期は272億円だったので下半期は差し引き428億円の積極投資が見込まれ、2022年3月までに生産能力前期比20%増を見込んでいる。12月には中国の自動車部品大手、正海集団との共同出資で上海に省エネ型のSiCパワーモジュールの開発・生産・販売を手がける合弁会社を設立し、2022年から中国のEV工場向けに量産を開始する。松本功社長は決算記者会見で「来期は投資額のケタが変わる可能性がある」と述べ、5月に発表した中期経営計画(2026年3月期まで)の目標数字の上方修正もほのめかした。

■村田製作所の電子部品は「5G」の恩恵を受ける

 村田製作所の4~9月期決算(米国基準)は、売上高は前年同期比20.8%増の9080億円、営業利益は68.9%増の2221億円、税引前四半期純利益は71.1%増の2278億円、四半期純利益は68.0%増の1677億円という大幅増収増益決算で、最終利益が過去最高になるなど当初見通しを上回って着地した。中間配当は前年同期比5円増配の60円としている。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は61.9%である。

 製品分野別の売上高は前年同期比で、車載向けセラミックコンデンサが大きく伸びたコンデンサが34.8%増、スマホ向け表面波フィルタが大きく伸びた圧電製品が25.7%増、スマホ・PC向けインダクタ、リチウムイオン二次電池が大きく伸びたその他コンポーネントが29.8%増、スマホ向け需要が減少したモジュールが6.3%減だった。用途別の売上高ではゲーム機向けが伸びたAV9.6%増、スマホ向けが伸びた通信3.0%増、リモートワーク、オンライン教育向けの需要が伸びたコンピュータ及び関連機器31.2%増、積層セラミックコンデンサ、EMI除去フィルタ、インダクタが伸びたカーエレクトロニクス50.9%増、家電・その他49.5%増となっている。業績を大きく支えたのは「5G」が本格的普及期に入ったスマホ向けと自動車向けで、製品では世界シェアが高い積層セラミックコンデンサ、表面波フィルターが寄与している。

 村田製作所は通期業績見通しを修正していない。売上高は前期比6.1%増の1兆7300億円、営業利益は16.5%増の3650億円、税引前当期純利益は16.0%増の3670億円、当期純利益は14.3%増の2710億円。予想期末配当も修正なく前期から据え置きの60円で、予想年間配当は前期比5円増配の120円としている。通期見通しを変えなかったが、村田恒夫会長はオンライン記者会見で、下半期以降の需要は「弱含みになる」と警戒している。大手各社が旺盛に部品在庫を積み増した自動車向け需要や通信向け需要にそろそろ陰りがみられるという。

■京セラは半導体市場の活況を背景に積極投資を加速

 京セラの4~9月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上高は前年同期比25.9%増の8763億円、営業利益は214.5%増の756億円、税引前利益は105.9%増の993億円、四半期純利益は113.1%増の732億円だった。前年同期が大幅減収減益だった反動に需要の急回復があいまって、営業利益約3.1倍、最終利益約2.1倍の増収・大幅増益決算になっている。中間配当は前年同期から30円増配して60円とした。4~9月期最終利益の通期見通し(上方修正済み)に対する進捗率は52.7%である。

 事業セグメント別にみると、「コアコンポーネント」は売上高25.8%増、利益158.7%増で、「電子部品」は売上高30.7%増、利益206.1%増、「ソリューション」は売上高23.6%増、利益311.7%で、各分野とも利益の増加が著しく、利益率が大きく伸びている。業績に寄与したのは「コアコンポーネント」は半導体製造装置用のファインセラミック部品、車載カメラのような産業・車載用部品で、半導体関連部品とともに「xEV」「5G」の需要拡大の恩恵を受けている。「電子部品」も5Gが大きく寄与し、通信機器向けの小型高容量コンデンサ、水晶振動子が大きく伸びている。「ソリューション」の主役は自動車産業向け、住宅産業向けの需要が伸びた機械工具と、コロナ禍を避けたリモートワークでプリンターや複合機が世界的に売れたドキュメントソリューションだった。

 5G向けのセラミックパッケージや電子部品がけん引する好決算を受けて通期の業績見通しを上方修正し、売上高は200億円引き上げて前期比14.6%増の1兆7500億円、営業利益は290億円引き上げて106.7%増の1460億円、税引前利益は300億円引き上げて61.6%増の1900億円、当期純利益は260億円引き上げて54.1%増の1390億円とした。想定為替レートは1米ドル=110円、1ユーロ=130円と円安方向に修正。期末配当予想は前期から10円増配して90円、予想年間配当は40円増配して180円とし、前回予想から20円上積みした。

 11月1日に400万株、271億5600万円を上限とする自己株式の取得(自社株買い)を発表し、翌日執行。同じ11月1日にベトナム工場に半導体パッケージを生産する新棟を建設する計画を発表した。10月20日に鹿児島県の国分工場での半導体装置部品を生産する新棟建設を発表したばかりだが、決算記者会見で谷本秀夫社長は半導体の世界市場の状況について「ありえないぐらいの活況を呈している」と話している。設備投資額は今期1700億円を予定し、今後3年間で過去最大規模の設備投資を計画しているが、谷本社長はその計画の上積みをもほのめかし、積極投資はますます加速しそうだ。(編集担当:寺尾淳)