EV化の波は自動車だけでなく、バイクにも及んでいる。株式会社グローバルインフォメーションが発表した市場調査レポートによると、電動スクーターおよび電動二輪車の市場規模は、2020年の86万1000台からCAGR31.8%で成長し、2027年には594万8000台に達する見通しだ。充電インフラネットワークの不足や、購入費用等が従来のバイクよりも高コストにはなるものの、行政の補助金や税優遇制度を活用すれば同等まで費用を抑えられることや、静音でクリーンな点、さらにはコロナ禍で食品などの宅配需要が増えたことも追い風となり、日本国内でも着実に販売台数を伸ばしている。また、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、バイクにも脱炭素が強く求められることになりそうだ。
国内二輪車メーカーがバイクの電動化に本腰を入れはじめている。実は、日本の電動バイクは約20年前から始まっている。2002年にヤマハ発動機が量産電動バイクを初めて発売したのを皮切りに、ホンダやスズキも、こぞって電動バイクを市場に投入した。しかし、当時はまだ充電インフラも制度も整っておらず、普及するには至らなかった。しかし、時代は変わる。ヤマハは電動バイクの販売比率を35年までに20%まで引き上げる目標を掲げ、カワサキに至っては、35年までに先進国向け主要モデルの新車販売のすべてを電動車に切り替える方針を打ち出している。
ホンダも、配達や大型荷物の配送用途で人気の「ジャイロ」シリーズの電動化を進めており、現在2割程度の電動化比率を2025年までに7割強まで高めるとしている。同社が今年10月に発売した法人向けの電動バイク「ジャイロキャノピーe」では、航続距離が従来比1.2倍の交換式電池を2個搭載。時速30キロメートル走行を想定した場合、77キロメートルの走行が可能となる。交換式電池を採用することで、充電時の待機時間や、航続距離の制限を解消することにつなげたい考えだ。
部品の性能が飛躍的に向上しているのも大きい。自動車や産業機器の電動化、自動化へのシフト、さらには家電製品の高機能化などによって、部品の一つ一つも進化を遂げている。
例えば、アプリケーションで電流の制御や管理をするために搭載されている小型の電流検出用部品にシャント抵抗器というものがある。アプリケーションの高電力化が進む中、過電流で故障しないための保護回路の重要性も高まっており、モーター駆動回路やバッテリー保護回路に用いられる、このシャント抵抗器にも小型で高精度かつ高電力対応可能なものが求められている。そんな中、11月1日に電子部品大手のロームが業界最高の定格電力4Wを実現した厚膜シャント抵抗器「LTR100L」の開発を発表した。同製品は汎用的に使用可能で、EVスクーター、電動バイクなどをはじめ、産業機器のモーター周辺回路やFA機器、民生機器ではエアコンや洗濯機、冷蔵庫など、幅広いアプリケーションで高効率な動作や駆動時の消費電力削減、回路の信頼性向上などを強力にサポートする。
若者のバイク離れもあり、販売台数が落ち込んでいたバイク市場だが、電動バイクの市場は徐々に拡大傾向にある。EV自動車の普及もあって充電インフラも整いつつある今、クリーンで省エネ、静かで小回りの利く電動バイクブームが近い将来、到来するかもしれない。(編集担当:今井慎太郎)