厚生労働省の発表によると、令和3年3月に大学や高等学校などを卒業した学生生徒のうち、37事業所で136人が内定取り消しになったことがわかった。内、27事業所、124人が新型コロナウイルスの感染拡大が影響しているとみられている。合同説明会やインターンシップの中止などが相次いだ昨年度に比べると若干改善してはいるものの、それでも深刻な事態が継続中であることは間違いない。就職難に加え、コロナ不景気も相まって、就職氷河期と嘆く声も多い。
そんな中、就職の機会を奪われた人たちに救いの手を差し伸べる企業も現れはじめている。
木造注文住宅を手がける株式会社アキュラホームは、新型コロナの影響などで企業側の事情により、 内定取り消しや入社辞退に追い込まれた就活生をはじめ、新型コロナによる経済的な事情などから、学校や専門学校などを中途退学せざるをえなかった学生らを対象に、特別採用枠を設けて100 名を追加募集することを発表した。
実は、同社及びアキュラホームグループは、最初の緊急事態宣言発令以降も、16か月連続で昨年の販売実績を上回り、世界中が混乱の渦にあるコロナ禍においても業績が堅調に推移している超優良企業。同社では今後のさらなる事業領域の拡大を見据え、 就職の機会をコロナによって奪われた人材を積極的に採用するという。しかも、コロナの影響で就職の機会を奪われてしまったり、学校の中退を余儀なくされた学生は、中途採用ではなく「新卒」扱い同等での雇用になるというから、対象者にとっては非常に有り難いのではないだろうか。その背景には、同社の宮沢社長自身が家庭の事情によって中卒で働かなければならなかったという苦い思い出もあるそうで、困っている若者を放っておけない性分なのかもしれない。
一方、就職氷河期といわれる中でも、デジタル人材の採用は高水準を保っているようだ。富士通やNEC、NTTデータなどは、高度な専門スキルを持つ人材を強化するため、獲得に向けて中途採用も積極的な姿勢を見せている。ちなみに20年度、21年度共に中途採用を300人に倍増している富士通は、グループ企業全体で12月に大規模なグループセッションを計画している。グループ企業の特色や求められる人材など、テーマ別の話のほか、個別ブースでの企業説明や説明会など、Zoomを通して行う予定だ。
新型コロナウイルスの影響で経営悪化に陥ったり、先行きが不透明なことなどから採用活動を控えようとする企業側の事情も分かる。しかし、裏を返せば優秀な若い人材を獲得できる絶好のチャンスとも言えるのではないだろうか。(編集担当:今井慎太郎)