【コラム】立憲はまず全地方議会に議員を誕生させよ

2021年11月07日 09:26

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第49回衆議院選挙は野党第1党の立憲民主党に厳しい結果になった

 第49回衆議院選挙は野党第1党の立憲民主党に厳しい結果になった。議席を減らすと誰が予測しただろう。立憲がどこまで伸ばすか、期待していた。

 しかし、蓋を開けると自民の減は15にとどまり261議席、公明は3増の32議席、維新は30増やし41議席、国民も3増の11議席だった。いずれも右派・中道。自民・公明・維新3党で465議席のうち、334議席を占める。

 専守防衛姿勢を逸脱する危険が高い「敵基地攻撃能力」の保有や防衛費GDP(国内総生産)の2%へ拡大が支持されたとの論調や自民右派らが求める愛国心教育の推進など教育の右傾化、改憲勢力の一層の台頭が、最大4年の衆院勢力図の中で顕著になることを懸念する。

 今回の総選挙で立憲、共産は議席を減らした。立憲は14減らし96議席、共産も2減らし10議席、社民は1議席、れいわは2増の3議席。中道、左派は全体として票を減らした。4党で110議席。得票率は4党で33%(1889万2427票)。自民党1党のみの得票(1991万4883票)に届かない状況に、課題と反省点は多い。徹底分析と対応が必要だろう。また立憲・共産・社民・れいわ4党が合意した20項目実現に向けての努力は継続しなければならない。

 立憲・共産は社民・れいわと連携し「政権交代」を目指した。その選択は勇気ある決断で、正しい選択だったと思う。政権交代の実現が必要だったからだ。その最大理由の一つは(1)民主主義を守るうえで絶対に許してはならない公文書の改ざん・隠ぺい・廃棄、総理らによる国会での虚偽答弁、こうした事態を招いた森友・加計・桜・日本学術会議会員任命拒否問題など、安倍・菅政権の『負の遺産』の清算を、新しい政府の手で行うことが必要だったからだ。

 (2)内閣人事局の在り方の見直し(3)安保法制での違憲部分の廃止(4)消費税減税と富裕層への負担強化(5)法人税の見直し。

 少なくとも、これらの問題にメスを入れることは健全な民主主義、公平公正な政治実現には必要なことだ。自民党、公明党に1票を投じた有権者は、これらの問題整理は、他の政策以上に重要とは認識しなかったようだ。

 問題を徹底追及してきた立憲の今井雅人氏や辻元きよみ、川内博史という党の顔的論客が議席を失った。平野博文氏の落選も立憲にとってショックは隠せない。選挙で返り咲いた日本共産党の宮本たけし衆院議員は「私が国会に戻ったら、今井雅人さんも、川内博史さんもいないとは…。しかし『モリ・カケ・桜もおしまい』にはならない。私がいるからだ」と論客の一人が国会に戻ったことは国政のためによかった。

 筆者は立憲がなぜ議席を減らすことになったのか、原因がわからない。共産党との連携がそこまでアレルギーを惹き起こしたと言えるのか。日本共産党はその名の通り、『日本』の共産党であり、中国のそれとは異なる。日本共産党綱領は「日本国憲法を遵守する」と規定している。憲法9条や53条への姿勢をみても、自民党以上に憲法を遵守し、遵守すべきと訴えている党といえる。

 筆者自身は自民の石破茂氏や立憲の長妻昭氏、福山哲郎氏らを支持する立場で、客観的には中道革新系の立ち位置にいるのかもしれないが、無党派層の1人。時々の状況で投票行動を起こしている。今回は安倍・菅政権の負の遺産の清算を必要とする意味から立憲を支持した。

 民主主義を壊してきた「負の遺産」の清算は日本政治への信頼回復のために避けて通ってはならない。国会の場が一党の『絶対安定多数』では「政治の安定」はあるが、偏向政治に陥るリスクも大きい。国会勢力図には暴走を避けさせるためのバランスも必要。

 来年の参院選挙で中道革新系が巻き返しを図れるのか、立憲は今回の選挙分析と対策への取り組みが急がれる。

 比例票を見ると、立憲への集票力がかなり低い。特に大阪は維新の地盤で、府内のある自治体では自民を1にした場合、維新は2.1、公明は0.8、共産は0.4、立憲は0.3だった。ある保守県で自民を1とした場合、維新0.9。公明0.4に対し、立憲は0.4、共産0.2、国民とれいわはともに0.1、社民は0.1に届かない。野党第1党の立憲がこの惨状。党としての地方組織・地方基盤の弱さが際立っている。

 来年の参院選挙と次期衆院選挙を考え、地方での根の張りように全力で当たることが必要だ。向こう2年以内に行われる地方自治体すべての議会議員選挙に候補を擁立し、まず、地方議会に日常的に活動する立憲議員を配置できるように努めるべき。

 地方議員を通して地方の課題吸い上げと党本部の政策、取り組みを日常的に国民に周知していく基盤をつくらなければいけない。政権をとるには欠かせない活動だ。

 今回の衆院選、小選挙区は「野党候補の一本化」で、62選挙区に競り勝ち、1万票以内の僅差で負けた選挙区が32に上る。地方基盤ができていれば、逆転可能だろう。連合依存体質からの脱却も必要だ。連合との協力関係は必要だが、依存体質では政権には届かない。

 一方で、日本共産党はこれまでの実績とともに、党に対する誤解、誤ったイメージの払しょくに努めなければならない。戦前・戦中から時代は大きく変わった。機関誌やビラ、街頭演説などでも「共闘する」「たたかっていく」という勇ましい表現から「一致団結する」「連帯していく」「共同戦線をはっていく」など無党派層も受け入れやすい表現にしていく工夫を期待したい。

 日本共産党の志位和夫委員長は「いまの選挙制度の下で政治を変えるには共闘しかない。共闘の道を揺るがさずに発展させていくために引き続き力を尽くす」と1日の記者会見で表明したが、その実効性をあげるためにも、「共闘の道」ではなく「一致団結していく道」へ、発信する表現を変える工夫もお願いしたい。

 また、立憲は枝野幸男代表の辞任を受けて、新代表を選出するが、結党の原点に立ち、政権奪取のための体制つくりを着実に進めることが、野党第1党として、国民の期待に応えることになることの自覚と自信を持ち、政権奪取にまい進すべき。それは、民主主義と政治全体の活性化につながる。「政権交代」可能な力を地方から整えてほしい。

 そして8か月後の参議院選挙。試される機会は目前にある。健全な政治には時の勢力と互角に対峙するもう一つの勢力が存在しなければならない。(編集担当:森高龍二)