新型コロナウイルス感染症のワクチン普及に伴う世界的な経済正常化の中、カーボンニュートラル社会の実現の動きも背景となって、自動車の電動化へのシフトが加速している。電動化への動きは単に駆動力が内燃機から電動モーターに代わるというものだけではなく、自動車のコンセプトそれ自体を大きく変革させるものだ。新しいテクノロジーの導入で制御の作法も代わり、ダッシュボードや内装のデザインも刷新される。これに伴い新機能ディスプレイなどを実現するため内装の素材も大きく変化し、周辺部材メーカーにとっても大きなビジネスチャンスとなり、市場は今後拡大傾向となりそうだ。
11月29日に矢野経済研究所が「車載ディスプレイ部材世界市場に関する調査(2021年)」の結果レポートを公表している。この中で車載ディスプレイの主要部材である静電容量方式タッチパネルの出荷数量について今後の動向が予測されている。最も数量シェアが多いガラスセンサーの出荷数量の推移を見ると、コロナ前の19年が2万3200パネル、コロナ禍初年の20年は2万2100パネルと落ち込んだものの、21年は2万3400パネルまで回復する見込みで、22年は前年比113.2%の2万6500パネル、23年は2万7500パネルと拡大傾向が予測されている。インセル(In-Cell/On-Cellタイプ)は21年が5500パネルの見込み、22年が前年比143.6%の7900パネル、23年が同157.0%の1万2400パネルと大きな伸びが予測されている。一方、アウトセルのフィルムセンサーは横ばいから減少傾向と予測されている。
EV化による内装のデジタル化の進展で、車載ディスプレイの搭載枚数が増加することは間違いなく、またディスプレイの大画面化や曲面化、OLEDなどの高精細ディスプレイの採用など、車載ディスプレイ市場は大きく変化し拡大するものと見込まれる。これに伴い、タッチパネルや前面板、OCA・OCR、反射防止フィルムなどの機能性フィルムといった周辺部材に新たなニーズが生まれているようだ。特にEVの新型車では従来の技術やデザインを継続する必要が無いためマルチディスプレイや曲面ディスプレイなど新たな技術とデザインのディスプレイ搭載が増加すると予想される。レポートは「車載ディスプレイ部材メーカーにとって、従来にない製品を開発・提案するチャンスが増える」と予測している。(編集担当:久保田雄城)