新型コロナウイルス感染症の流行は社会の様々な分野に大きな変化をもたらした。中でもテレワークの普及は人々の生活の仕方を大きく変えただけでなく、考え方にも大きな影響を与えているようだ。感染予防の目的で半ば強制的にテレワーク利用の普及が進んだが、実際にテレワークを経験する中で人々の働き方の意識は大きく変化してきている。その一つが地方勤務、地方移住への意識の変化だ。コロナの流行が大都市圏で顕著だったこともあり、地方勤務、地方移住を志向する者が増えているようだ。その一方で企業の地方移転には様々な課題があり、経営層は従業員より地方移転に慎重なようだ。
IT・コンテンツ関連企業の誘致に取り組んでいる高知県が、大都市の20~60代の経営層200名と従業員200名の計400名を対象として9月に実施した「企業の地方進出に関する調査」の集計結果を12月2日に公表している。これによると、「コロナ前にテレワークができると思っていたか」という質問に対して、「できないと思っていた」との回答は70.0%で、7割の者にとってテレワーク実施は想定外であったようだ。調査時点でのテレワーク実施状況について聞いた結果では、「コロナ前もしていて、現在もしている」が10.3%、「コロナ前はしていないが、現在はしている」34.0%となっており、44.3%の者がテレワークを継続している。
「コロナ前はしていないが、現在はしている」と答えた136人に「地方で働きたいと思うか」と尋ねた結果では、「そう思う」と回答した者は38.2%で、約4割が地方で働きたいと思っている。「コロナ禍を経て、地方勤務や移住にポジティブな気持ちになったか」という質問には、「そう思う」は40.3%で、年代別には20代が54.2%、30代は51.5%と若い世代の半数以上がポジティブな気持ちを抱いている。これを従業員・経営層別にみると、従業員では45.0%、経営層では35.5%となっており、従業員では2人に1人に対して経営層では3人に1人程度と地方への移転に関して意識の差が見られる。
経営層が積極的でない要因を見ると、「費用対効果が読めない」の48.5%がトップとなっているなど、移転コストや人材調達、収益効果への不確実性が経営層を消極的にしているようだ。高知県では、こうした不安を払拭するために「IT・コンテンツ関連企業進出をサポートするHP」上で各種支援策を告知している。(編集担当:久保田雄城)