脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速している。政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言、21年5月には改正地球温暖化対策推進法を成立させ、国、自治体、事業者の温暖化対策の取り組みを継続可能なものにしようとしている。脱炭素社会の実現に向けた新たなエネルギーへのシフトを実現させるためには新たな技術の導入が必要だが、今後こうした分野の設備・システム関連の市場は急拡大が見込まれる。
矢野経済研究所が12月13日に「脱炭素社会を実現するための国内エネルギー設備・システム市場」に関する動向調査の結果レポートを公表している(調査期間は4~11月)。対象分野は、新たな2次エネルギー供給形態として必要な「水素」と「CO2フリーアンモニア」、CO2を有効利用する「CCUS・カーボンリサイクル」技術、「再生可能エネルギー」、再エネ電力の効率的使用に必要な「蓄電池」となっている。
レポート内で注目トピックとされているのが液体合成燃料だ。液体合成燃料は水素とCO2を合成して製造される燃料で「人工的な原油」とも言われる。エネルギー密度が高いためモビリティ用燃料としても使える。既に車両の水素化が進んでいるがエネルギー密度が高いため航空機の燃料としても利用でき、工業生産が可能なためエネルギーとして持続性がある。化石燃料は海外からの輸入に頼っているが、合成燃料は再エネや排出CO2を利用し国内生産が出来るためエネルギー安全保障の観点からも重要視されているようだ。
合成燃料を生産するためには「水素」と「CO2フリーアンモニア」が必要となるが、さらにそれらを脱炭素化するとともに排出CO2を有効利用するために「CCUS・カーボンリサイクル」技術が必要となる。こうした技術の安定供給を裏付ける国内エネルギー設備・システムの市場規模は、21年度に7250億円と見込まれ、30年度2兆3430億円、50年度には3兆9850億円まで拡大するとレポートは予測している。さらにレポートは「カーボンニュートラルの主役は水素」であるとし、この分野の設備・システム市場の規模を21年度は960億円と見込み、30年度は8200億円、50年度は1兆7400億円と対象分野全体の中でそのシェアを急拡大させると予測している。これに比例し水素やアンモニアを脱炭素化する共通基盤技術であるCCUS・カーボンリサイクル分野の市場も50年度には4800億円まで拡大するという予測だ。(編集担当:久保田雄城)