昨年秋から新型コロナウイルスの感染は急速に収束し、9月には宣言等の規制も全面解除され経済活動は徐々に正常化された。しかし、冬に向けてオミクロン株の登場などもあり、国民の警戒心は強く消費活動は慎重なままだ。既に12月から感染者数の7日平均前週比は上昇に転じておりオミクロン株も市中に広がっている。国民は未だコロナ禍での行動変容を元に戻す気配を示さない。単に変異株の登場への警戒心だけでなく、コロナ禍での行動変容で気付いた合理性によって、仮にコロナが終焉しても元の生活様式に完全には戻さないと考えている者も多いようだ。国民が生活様式の回帰を考えるためには、まず治療法の確立と医療体制の整備が前提となるようだ。
昨年末の27日、野村総合研究所が「アフターコロナの行動回帰に関する意識調査」の結果レポートを公表している(昨年11月下旬、全国の20~79歳の男女5156人を対象に実施)。これによれば、「コロナ前の生活に戻したい」は30.8%のみ、「ある程度は戻すが、完全には戻さない」が60.7%で多数派となっている。ワクチン接種済の者に限っても「完全には戻さない」が62.9%と3人に2人近くを占めている。
コロナ前に戻さないものを見ると、「コロナ前より頻度が少なくなる」のは「大人数での飲食」43.8%、「海外旅行」41.9%と4割超だ。また「屋内イベント等への参加」38.8%、「屋外イベント等への参加」37.4%、「夜間の外出」34.0%についても3人に1人以上がコロナ以前より減ると回答している。ビジネスでは「オンラインでの打ち合わせ・商談が増える」が30.7%、「海外出張が減る」33.6%などが多くなっている。外食、宿泊、観光関連はコロナが終息しても客足の回復に限度がありそうだ。
「生活様式の回帰に必要だと思うこと」を聞いた結果では、「治療薬や治療方法の確立」が73.3%で最も多く、次いで「適切な治療を受けられる医療体制の構築」65.1%となっており、この2つが際立って多く、これに「ワクチン接種が完了すること」51.5%が5割超えで続いている。レポートは「コロナ禍による行動抑制が長期に及んだことで新しい価値観や生活スタイルの定着が進んだ様子も垣間見られ、企業や政府・自治体にはそうした変化を前提とした事業・政策の転換も求められている」と指摘する。また、国民が求める「治療方法や医療体制に関する最新情報を分かりやすく、周知することが重要」と提言している。(編集担当:久保田雄城)