少子高齢化による人手不足が深刻化している。団塊の世代が70歳をむかえた2017年以降は求人倍率も急上昇し、18年8月には1.64倍を記録、以後高止まり傾向が続いた。19年に入ってからは景気後退とコロナ禍で緩和に向かったが、その後の景気回復の中、再び人手不足は増加傾向にある。政府は労働力不足解消のため17年から外国人技能実習制度を導入、さらに19年からは人手不足が深刻な産業分野において即戦力人材を確保する目的で「特定技能制度」を設けた。しかし、この特定技能制度は現況では十分活用されておらず、企業の様々なニーズに沿った改善や支援が必要なようだ。
これに関し、大阪商工会議所が昨年11~12月に会員企業などを対象に「技能実習制度および特定技能制度に関する調査」(有効回答765社)を実施、1月21日にその結果レポートを公表している。これによれば、技能実習生の採用実績がある企業は21.1%であるのに対して、特定技能では11.4%となっている。今後特定技能人材を採用予定の企業は14.9%となっており若干の増加も見込まれる。
技能実習生の採用実績がある企業の43.5%が「特定技能の在留資格を申請し、自社で継続雇用する」と回答している一方、「実習生を帰国させる」と回答した企業の中には、自社の業種が特定技能制度の対象産業分野に該当しないため継続雇用を断念するケースもあり、対象分野の見直しも必要なようだ。特定技能外国人の採用経路については、71.6%が「在留する技能実習修了者」と回答し、「在留の特定技能試験合格者」を採用する企業も47.7%となっており、現在の特定技能制度の担い手は日本在留の外国人材が中心のようだ。採用要因については、「実務経験、即戦力」68.2%、「日本語能力」53.4%と即戦力としての期待が高い。
制度を活用しない要因については「自社の産業分野が制度の対象外」37.3%が最多だ。普及に必要な施策について聞いた結果、活用実績がない企業では「受け入れ支援策の拡充(助成金、専門家の指導等)」31.5%、「在留期間延長」29.5%、「優良支援機関の推奨」22.1%が上位にきている。実績がある企業では「在留期間延長」35.6%が最多、「特定産業分野の対象拡大」25.6%も多く、製造業、建設業、介護(訪問介護)などで多いようだ。
会議所は「企業の利便性を高めるよう制度改善を行うとともに、外国人材の受け入れに慎重な声にも耳を傾け、広く国民の理解を得られるような制度としていくことが必要」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)