ここ数年、企業が頭を悩ませる出来事が多発している。コロナ禍による経済の冷え込み、需要不足から一転した供給不足、原材料の高騰など、なかなか予測がつかない事象が相次いでいる。今まで以上に不測の事態に対応できる体制作りが、企業側には求められている。そんな中、「Environmentc(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(企業統治)」を重視する「ESG経営」が、難局を乗り越えるモデル経営として注目を集めている。
世界持続的投資連合(GSIA)の調べでは、2020年、世界のESG投資額が35.3兆ドル(約3900兆円)だったそうだ。18年比で15%増加している点は、いかにESG経営が堅調であるかを物語っている。投資家評価に向けた企業の取り組みとして始まったESG経営は、環境への配慮や社会規範の強化をするといった点において、SDGsとの相性も良い。ESG経営とSDGsの連携は、「パートナーシップで目標を達成しよう」というSDGs 17番目のゴールにも当てはまっている。国内の企業においても、様々な連携が進行している。
内閣府がSDGsの国内実施の促進と地方創生を目的に運営する「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」と連携しているのが、ESG経営を重視しているIT企業・株式会社デジタルホールディングスだ。地方創生やSDGsへの取り組みにおける課題に対し、「デジタル」を用いて解決へ導くスキルを提供し、新しい価値を共創していくことが目的だ。昨今話題のデジタルトランスフォーメーションを迅速化すると共に、日本全体の持続可能な地域活性化と成長力確保へ貢献が期待できる。
直接地方自治体との連携をすすめる企業もある。「SDGs 未来都市」である埼玉県と木造注文住宅を手掛ける大手ハウスメーカー・株式会社アキュラホームだ。埼玉県が創業の地である同社はこの度、木造住宅建築で最も多く使用される木造軸組工法の技術による純木造 8 階建ての新社屋を、埼玉県に建設する。「木造建築のランドマーク」として、木造建築の普及を進めると共に、埼玉県から ESG 経営や SDGs の取り組みを発信するそうだ。大野元裕・埼玉県知事も、同社のサーキュラーエコノミーな考え方に共感しており、今後の展開に注目だ。
民間企業同士の連携にも目を向けよう。大手広告代理店の株式会社電通は、企業のESG経営支援領域において、ESGスコアリング及びそのレポーティングのサポート力に定評のある株式会社ベクトルと業務提携をしている。非財務の新しい企業価値の指標と関連するソリューションを共同開発し、1年間で国内200社へのサービス提供を目指すそうだ。クライアント企業のグローバル市場における競争力向上と共に、全国の優良企業の認知拡大に繋がる試みとして、楽しみな連携と言えるだろう。
欧米を中心として始まったESG投資、及びESG経営は、確実に定着化してきている。今後、企業を経営して行く上で、「貢献」という言葉がキーワードになってくるだろう。「地球環境に対する貢献」、「持続可能な社会に対する貢献」、「協力が必要となる社員に対する貢献」が、企業価値を高める上で、非常に重要視される時代がやって来ている。(編集担当:今井慎太郎)