京都の電子部品関連で続く好調。コロナ禍、原材料高騰、金融引き締めでも「脱炭素」や「5G」への積極投資は継続

2022年03月13日 10:03

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京都市やその近郊に本社を置く日本電産、ローム、村田製作所の電子部品「京都3社」の4~12月期(第3四半期)決算が2月1日に出揃った

 京都市やその近郊に本社を置く日本電産、ローム、村田製作所の電子部品「京都3社」の4~12月期(第3四半期)決算が2月1日に出揃った。

 「脱炭素」を目指す世界的な流れ、産業機器の省エネ需要拡大、xEV(電気駆動機構を有する自動車)需要の高まり、好調な通信の「5G」需要などの大きなトレンドは変わらないが、足元では半導体不足、原材料価格の高騰が続き、それが自動車生産台数の減産も招いている。「オミクロン株」など新型コロナの感染拡大も終息の気配が見えない。さらに欧米先進国ではインフレ懸念が高まり、FRB、ECB、BOEなど中央銀行は利上げ、量的緩和の縮小など金融引き締めの方向へ転換している。そんな状況のもと、3社の4~12月期の業績は増収増益ながら4~9月期と比べるとやや減速気味となった。しかし、4~12月累計売上高としては3社とも過去最高を記録。さらに、2月1日に通期業績予想を上方修正した村田製作所に続いて、ロームも3月4日に上方修正を発表した。期末予想配当に至っては3社すべてが上方修正している。xEV、5Gの需要拡大、半導体不足、リモートワークに伴うパソコン需要の伸びなどを背景に、各社とも新製品開発、設備投資、M&Aなどでの積極投資の姿勢は崩さず、むしろ下半期に入ってからさらに活気を帯びている。

 ■日本電産は車載用トラクションモーターを中心に積極投資

 日本電産の4~12月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上高は18.8%増の1兆4072億円、営業利益は16.6%増の1346億円、税引前利益は19.4%増の1305億円、四半期純利益は20.1%増の1004億円だった。2ケタ増収増益を維持し営業利益は過去最高だったが、いずれも4~9月期決算と比べれば前年同期比の増加率が縮小している。その原因について同社は半導体の不足、銅やアルミや磁石などの原材料価格の高騰、新型コロナウィルスの新興国での感染拡大、自動車生産台数の減少トレンドからの本格回復がいまだみられないなど、外部環境の悪化を挙げている。4~12月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は67.8%である。

 ギアなどと組み合わせた「トラクションモーターシステム(E-Axle)」などの電気自動車(EV)用駆動モーター、家電向けコンプレッサー、空調機器向けモーター、工場の自動化で需要が伸びる搬送ロボット向け省エネ型モーターが好調。カテゴリー別では、創業以来の製品グループ「精密小型モータ」はIT用ファンモーター、家電用モーターなどの増収でカバーしてもHDD用モーターの販売不振、34.0%減収が大きく響き、外部売上高5.5%減、営業利益27.5%減。最重点分野の「車載」は外部売上高17.6%増だが営業利益は4~9月期の89.6%増から暗転して10.3%減。半導体など電子部品の調達難によるユーザーの減産、トラクションモーターの開発費計上、為替の影響約7億円が減益の主な原因だった。「家電・商業・産業用」は外部売上高34.1%増、営業利益59.9%増と引き続き好調だった。

 通期業績見通しは修正なし。売上高は11.2%増の1兆8000億円、営業利益は18.8%増の1900億円、税引前利益は21.0%増の1850億円、当期純利益は21.4%増の1480億円。想定為替レートは1米ドル=105円、1ユーロ=117円で変更なし。予想期末配当は前期から5円増配して35円、予想年間配当は前年度から5円増配して65円としている。オンライン決算説明会で永守重信会長は、月産3万台超のトラクションモーターE-AxleなどEV用モーターで、2022年度からの3年間で約3000億円を投資すると述べている。

 ■ロームは「5G」需要が望める窒化ガリウム製パワー半導体量産開始

 ロームの4~12月期決算(日本基準)は、売上高は28.3%増の3381億円、営業利益は129.7%増の562億円、経常利益は191.4%増の618億円、四半期純利益は156.1%増の484億円で、前年同期が減収減益だったために大幅な増収増益を記録した。

 半導体素子分野を中心に売上が大きく伸び、セグメント別では全分野で増収増益だった。LSIの売上高は前年同期比23.6%増、セグメント利益は182.5%増。自動車関連ではADAS(先進運転支援システム)向け、インフォテイメント向け、EV用絶縁ゲートドライバICなどが好調。半導体素子も自動車向け、産業機器向けパワー半導体、トランジスタが伸び売上高36.5%増、セグメント利益74.7%増。モジュールは売上高6.9%増、セグメント利益86.1%増。その他の分野は売上高42.5%増、セグメント利益241.4%増だった。

 通期業績見通しは3月4日に上方修正した。売上高は100億円引き上げて前期比25.0%増の過去最高4500億円、営業利益は60億円引き上げて79.3%増の690億円、経常利益は90億円引き上げて84.4%増の750億円、当期純利益は90億円引き上げて62.2%増の600億円。期末想定為替レートは1米ドル=115.34円へ変更。予想期末配当も25円上方修正し前年同期から35円増配の110円で、予想年間配当は前年度から35円増配の185円としている。

 ロームの今期の設備投資計画は700億円。2020年に竣工したSiCパワー半導体生産棟の本格稼働によって、xEVや産業機器で立ち上がるSiC需要への対応が期待される。また、今年春をメドに静岡県浜松市の工場で次世代半導体といわれる窒化ガリウム(GaN)製パワー半導体の量産体制に入る。これは「5G」基地局向けに需要の伸びが期待されている。

 ■村田製作所は「3層経営」に3年間で8700億円を投資

 村田製作所の4~12月期決算(米国基準)は、売上高は13.0%増の1兆3794億円、営業利益は40.1%増の3360億円、税引前四半期純利益は43.2%増の3428億円、四半期純利益は42.0%増の2504億円という2ケタ増収増益。最終利益の上方修正した通期見通しに対する進捗率は82.9%である。

 製品分野別の売上高は前年同期比で、積層セラミックコンデンサがパソコン向けで大きく伸びたコンデンサが29.4%増、スマホ、IoT機器向けの表面波フィルタが伸びた圧電製品が18.4%増、リチウムイオン二次電池、スマホ・PC向けインダクタが伸びたその他コンポーネントが23.6%増、スマホ向けの売上が減ったモジュールが15.8%減だった。用途別の売上高では巣ごもり需要でゲーム機向けが伸びたAVが3.0%増、コネクティビティモジュール、高周波モジュールの売上が減少した通信が4.1%減、リモートワーク、オンライン教育の需要を背景にパソコン向け需要が伸びたコンピュータ及び関連機器が28.7%増、積層セラミックコンデンサ、EMI除去フィルタ、インダクタが伸びたカーエレクトロニクスが29.5%増、リチウムイオン二次電池、積層セラミックコンデンサの売上が伸びた家電・その他が49.5%増、となっている。

 村田製作所も通期業績見通しを上方修正している。売上高は400億円引き上げて8.6%増の1兆7700億円、営業利益は450億円引き上げて30.9%増の4100億円、税引前当期純利益は490億円引き上げて31.5%増の4160億円、当期純利益は310億円引き上げて27.4%増の3020億円で過去最高益。予想期末配当も5円上方修正し前年同期から5円増配の65円で、予想年間配当は前年度と比べて10円増配の125円としている。用途別ではカーエレクトロニクスを従来見通しから下方修正したが、コンピュータ及び関連機器を上方修正している。

 村田製作所は2022年2月、福井県鯖江市に新研究施設を着工した。投資額は64億円で完成のメドは2023年8月。世界シェア約4割の積層セラミックコンデンサなど電子部品に塗装するためのめっき技術の開発、量産化を担当する。

 2021年11月に発表した2022年4月から始まる3年間の中期計画では、電子部品を「1層」、電子部品を組み合わせるモジュール・デバイスを「2層」、社会問題を解決するソリューション事業などを「3層」とする「3層経営」を打ち出した。中期計画では営業キャッシュフロー1兆2500億円の約半分の6400億円を設備投資に、4分の1の2300億円を3層経営を強化する「戦略投資」にあてる。(編集担当:寺尾淳)