ロシア経済の構造分析。金融部門への依存高く、制裁は効果的。ルーブル下落で日本も打撃

2022年03月27日 09:37

 2月24日にロシアがウクライナに侵攻を開始した2日後の26日、日本はロシアの個人や団体、銀行の資産凍結、ビザ発行停止、半導体をはじめとするロシア向け輸出への規制など、強い経済制裁に踏み切り、SWIFT排除への参加も表明した。さらに3月15日にはロシアの最恵国待遇停止など追加制裁を実施した。こうした主要国の制裁によりロシアの経済は金融のみでなく実体経済も大きな打撃を受けロシア国民の生活は大きな痛手を受けることは確実で、既にルーブルは下落、ロシア国内からはハイパーインフレの懸念も聞こえてくる。

 3月23日、東京商工リサーチとDun & Bradstreetが自社の保有するデータベースを基に調査したレポート「ロシア・ウクライナ企業『売上高トップ1000社』分析」を公表、ロシアは資源と金融への依存が鮮明であり、世界各国の制裁が有効であると結論づけている。レポートによれば、ロシアの企業数は350万社以上、ウクライナは150万社以上となっている。産業別では、ロシアはサービス業、卸売業、金融・保険・不動産、建設業、小売業で全体の約8割を占め、一方、ウクライナはサービス業、卸売業、建設業、製造業、農業が中心で両国の産業構造は大きく異なるようだ。トップ1000社の売上高合計は、ロシアが1兆4957億ドル、ウクライナは2274億ドルと約6.5倍の差となっている。IMFによる2020年の名目GDPはロシアが1兆4785億ドル、ウクライナは1553億ドルと両国の経済規模は大きな格差がある。

 ロシアのトップ1000社の産業構造をみると、「卸売業」241社が最も多く、次いで「製造業」179社、「運輸・郵便・電気・ガス及び衛生サービス」156社、「金融・保険及び不動産業」121社、「小売業」が98社、「鉱業」97社と続いている。レポートは「ロシアの経済規模はウクライナに比べ、約10倍大きく、金融や不動産セクターの割合が高い。それだけに経済制裁は効果的で、ルーブル下落の影響を合わせると実体経済への波及もまた大きいと思われる」としている。またロシアは資源大国でもあり、日本をはじめ主要各国は金融制裁のみでなく、輸出入の規制も強めているが、こうした制裁はロシア企業への打撃になる一方で「ロシアに依存する原材料の入手や価格に跳ね返るため、日本企業への影響も大きいと思われる」と指摘する。

 データベースから売上高の高い企業を抽出した結果、ウクライナでは国家防衛関連機関や保健・衛生関連機関など公的機関が上位を占め、これがロシアへの脅威となっている可能性もあると想像される。(編集担当:久保田雄城)