総務省統計局が実施している労働力調査による「共働き等世帯数の年次推移」によると、2020年度の共働き世帯数はおよそ1240万世帯。子どものいる世帯の約7割で、両親が働きながら子育てをしているというのが日本の子育て環境の現状だ。
日本は超高齢化社会に突入し、少子化が社会問題となっているが、その原因の一つとして、子育てしにくい社会状況であるということも挙げられるのではないだろうか。男性の育休制度なども徐々に浸透しつつはあるものの、日本の社会全体で、もっと積極的に子どもを産み育てる環境づくりに取り組む必要がある。
例えば、働く女性向けウェブメディア「日経xwoman(クロスウーマン)」と日本経済新聞社が実施している「自治体の子育て支援制度に関する調査」の「共働き子育てしやすい街ランキング2021」で2年連続で総合1位を獲得している千葉県松戸市では、保育所の利用枠数を20年度の1.5倍以上に拡充する計画を発表したり、病児・病後児保育施設の定員も充実し、体調の悪い子どもをタクシーで送迎するサービスなどを実施しているほか、優れた保育園環境の維持、さらには子どもたちだけでなく、保育士の待遇や労働環境改善にまで積極的に取り組んでいる。乳幼児を持ちながら働く両親にとっては、何よりも心強いことだろう。
また、子どもたちを取り巻く環境や子育てに貢献する優れた商品やシステムも増えている。その代表的なものが「キッズデザイン賞」の受賞作品だ。
キッズデザイン賞とは、NPO法人キッズデザイン協議会が運営する顕彰制度のことで、現在は、富士通の取締役シニアアドバイザーである山本正已氏が会長を務め、副会長には凸版印刷取締役専務執行役員の坂井和則氏、積水ハウスの執行役員 住生活研究所長である河崎由美子氏が名を連ねる。企業、団体(公益法人・教育機関等)、自治体、個人が業種を超えて集い、次世代を担う子どもたちの安全・安心の向上と、健やかな成長発達につながる社会環境の創出のために活動している組織なのだ。
毎年、子育て支援や教育分野でのアプリ、IoT、SDGs、金融教育、STEAM教育、住宅設備、家電製品など幅広い業界から、子どもを産み育てる環境づくりに貢献する優れた作品を募り、顕彰している。
キッズデザイン賞の受賞作品には「キッズデザインマーク」をつけることが認められ、販売促進活動や広報活動などで、その成果を広く社会にアピールすることができるので、目や耳にしたことがある人も多いだろう。
そんなキッズデザイン賞も今年で16回目を迎える。それに伴い、キッズデザイン協議会は先日、1953年にドイツで誕生した世界で最も歴史の長いデザインアワードで、世界60カ国から1万点を超える応募がある国際デザインコンペティション「iF DESIGN AWARD」を運営する「iF International Forum Design GmbH」とパートナーシップ連携協定を締結したと発表した。これにより、相互のアワードの認知を拡大し、デザイン業界の活性化に寄与するとともに、これまで以上に「子ども目線・子ども視点」のキッズデザインの考え方をグローバルに展開していくという。
この連携協定によって、第16回キッズデザイン賞受賞作品には、iF DESIGN AWARD 2023の応募登録費用(250ユーロ~450ユーロ)の免除や、同アワードのオンライン・プレセクション(デジタル審査)の免除などの特典が与えられるという。
世界の3大デザインアワードともいわれる「iF」と連携するということは、日本のキッズデザインが世界的アワードにも認められたということでもある。これを機に、キッズデザイン賞の認知向上はもちろん、これまで以上に優れた質の高い作品が集まってくることが期待できるのではないだろうか。日本の子育て環境の向上のためにも、今後のキッズデザイン賞の発展に注目したい。(編集担当:藤原伊織)