トヨタ自動車は先ごろ発表した第1四半期決算で、2023年3月期の原材料費が前期より1兆7000億円膨らむと公表した。当初予想比で2割増の見通しとなる数字だ。ウクライナ紛争や円安で部品調達コスト高騰が想定を超え、電力などのエネルギー価格の負担増、半導体不足の影響も続きそうだ。
トヨタが原材料高による業績への影響を見直すのは、取引する部品メーカーの収益悪化に対応するため。DENSOやアイシンを含むトヨタグループ系列の部品メーカー12社の4~6月期の最終損益は全社で悪化し、愛知製鋼など最終赤字に転落する企業も出た。
原材料高はクルマの主要材料に及んでいる。日本製鉄はトヨタなどが使っている鉄鋼の価格をすでに引き上げたが、引き続きメーカー向けに大幅な値上げを打診しているとされる。製鉄に必要な石炭など原料高まだまだ続く見込みで、価格転嫁は避けられない。新車販売は堅調で、鉄鋼の需要も根強く値下げはしばらくないとの予想が一般的だ。
また、エネルギー価格も法人向け電力料金がこの1年で3~5割、都市ガス料金も6割上がり今後も上昇傾向にある。中小部品メーカーを中心に負担も大きい。
こうしたなか、トヨタは系列の部品メーカー、すなわち仕入れ先企業の支援を強化する。原材料価格の高騰はトヨタだけでなく、仕入先の収益構造も圧迫している。このような状況を受けてトヨタは、原材料価格の高騰による仕入先のコスト増加分を追加で負担する。
トヨタと仕入先の間には、「原材料価格の上昇分は原則、トヨタが負担する」というルールがある。このルールに基づき期初に、2022年度通期(2022年4月~2023年3月)の負担額を試算した結果が1兆4500億円だった。それが1兆7000億円にまで膨らむ。
ただ、トヨタが8月4日に発表した2022年度通期の業績見通しによると、原材料価格の高騰による負担額は、2022年5月に公表した期初の計画に比べて2500億円増え前期比117,2%となる。この増加分が、仕入先の増加コストとして、トヨタが追加負担する金額というわけだ。
なお、発表した2022年度第1四半期の連結決算によると、同期の世界販売台数は前年同期比6.3%減の201万3000台だった。部品不足による生産制約の影響で、日本や北米、欧州、アジアで減らした。
こうした状況下でも、トヨタ&レクサス両ブランドの世界生産台数は当初計画どおり970万台とした。部品不足による生産制約は改善しており、挽回できる970万台を維持した。
同期の売上高は前年同期比7.0%増の8兆4911億円、営業利益は同42.0%減の5786億円で、増収減益だった。円安が1950億円の増益要因となったが、販売台数の減少が2450億円、原材料価格の高騰は3150億円、諸経費の増加が1250億円の減益要因となり、円安効果を補えなかった。(編集担当:吉田恒)