トヨタ・モビリティ基金(Toyota Mobility Foundation/TMF)、デンソー、東京海上日動、東京大学は、高齢者の安全運転支援を目的とした実証実験をトヨタの本拠地・愛知県豊田市で開始すると発表した。
ドライブレコーダーから収集した映像などをAIで分析し、安全運転のためのアドバイスを行うAI運転診断システムを活用して、高齢者の事故リスク低減を効果的に実現する方法を検証する。
なお、この実証は豊田市の交通死亡事故ゼロを目指した官民連携事業「ジコゼロ大作戦」の一環として実施する実験だ。
近年、交通事故の件数は減少しているが、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故の割合は増加傾向にある。2022年5月には、高齢ドライバーの事故対策を盛り込んだ改正道路交通法が施行され、一定の違反歴のある75歳以上のドライバーには免許更新時に「運転技能検査(実車試験)」が義務付けられた。今後も高齢免許保有者は増加が見込まれ、高齢者が事故を起こさず安全に運転するための支援・仕組みづくりが重要な社会課題となっている。
今回の実証実験では、デンソーが開発を進めているAIによる映像解析技術などを活用したAI運転診断システムを利用。AIがドライバーの挙動から安全運転度を診断し、東京海上日動、東京大学の知見も活用しながら運転行動の改善につなげてもらう仕組みを構築する。
TMFは実証実験を通じて得られた知見を公開、AI・データ分析技術が高齢者の移動課題解決へ活用されるよう促すとともに、産業界・学術界・医療界等との幅広い連携によって本取り組みの実効性を高めるなど、高齢ドライバーの交通安全促進に向けて積極的に取り組む。
具体的な実証実験の内容とデンソーが開発するAI運転診断システムの特徴は以下のような内容だ。
運転中の車内外カメラ映像やセンサーデータを常時ドライブレコーダーのSDカードに記録して、記録データを分析する。ドライブレコーダーのイベント録画機能を使って衝突事故等時の車内外データを解析するサービスは普及しているが、本システムでは記録データをすべて解析するため、日常のリスクシーンや運転の癖などの潜在的なリスクまで解析が可能だ。解析データをもとにドライバーにリスクなどをフィードバックすることで行動変容を促進し、リスクに結びつく運転特性の改善や事故の抑制に働きかける。
ドライバーにフィードバックする運転評価&アドバイスの内容は、総合評価の点数やアドバイス、前月の自分の成績との比較、同世代との比較。加えて、参加者自身の危険運転の映像および交通ルール違反の回数(75歳以上免許更新時における実技試験の受検対象となる違反項目を含む)、そして統計的に事故が多い自宅周りの危険運転の状態・映像の確認などとなる。
交通安全の実現には、ドライバーや歩行者という「人」に対する啓発活動、安全な「クルマ」の開発、信号設置や道路整備など「交通環境」整備、の三要素が一体となった取り組みが重要だ。今回、TMF、デンソー、東京海上日動、東京大学は、本ツールを活用した「人(高齢者)」への啓発活動に加え、新たな技術や視点の導入を通じて、「交通事故死傷者ゼロ社会」の実現に向けて取り組みを推進していくとしている。(編集担当:吉田恒)