9月19日は育休を考える日。「男性育休フォーラム2022」でマネジメント層のジレンマが浮き彫りに

2022年09月17日 17:25

育休-3

男性育休フォーラム2022で話す積水ハウスの仲井社長

 9月19日が、何の日かご存じだろうか。もしも知らなかったら、この機会にぜひ覚えておいてほしい。9月19日は9(きゅう)と19(いく)を入れ替えると「いくきゅう」になるので、「育休を考える日」。2019年に総合住宅メーカーの積水ハウス株式会社が制定し、一般社団法人・日本記念日協会により認定、登録された記念日だ。

 厚生労働省が実施する「雇用均等基本調査」によると、2021年度の男性の育児休業の取得率は13.97%。9年連続で上昇しており、徐々に育休の取得が社会に浸透しつつあることは伺えるものの、政府が掲げる「25年までに男性育休取得率30%」の達成には、まだまだ遠く及ばない。

 そんな中、「育休を考える日」が制定されてから毎年恒例となった「男性育休フォーラム2022」が14日、二部構成で開催され、WEB配信された。一部では、人事院総裁の川本裕子氏、サイボウズ株式会社チームワーク総研所⾧ 和田武訓氏、NPO法人e-Educationの創業者で、小布施町ゼロカーボン推進員の税所篤快氏、そして主催者である積水ハウスからは代表取締役 社⾧執行役員 兼 CEO 仲井嘉浩氏と、執行役員 ダイバーシティ推進部⾧ 山田実和氏が参加。ジャーナリストで 東京工業大学准教授を務める治部れんげ氏の司会のもと、講演や「男性育休取得を浸透させるために、企業・組織が今できることとは」をテーマにしたパネルディスカッションが行われ、男性育休の進行状況や取り組み事例、社会や組織に浸透させるための課題や解決策などについての意見が交換され、日本で男性の育休取得を当たり前にするために企業はどうすべきかについて話し合われた。

 冒頭で挨拶した仲井社長は、「育児は未来を担う子どもを育てる大事な仕事」と述べ、同社初の取り組みとして、業種・業態を超え、男性育休取得推進に賛同する81企業・団体と共に、「日本にもっと男性の育児休業を」というメッセージの下、男性も育児休業を取得できる社会を応援するプロジェクトを順次展開することを発表し、プロジェクトのWEB動画「男性育休、あなたはどう思いますか?」も公開。同動画は14日からWEB公開されているほか、15日からは同動画を基に制作したテレビCMも全国で放送されている。育休を取った人、取ろうとした人のリアルな声を基にした動画となっており、短いながらも深いメッセージや問題提起を含んだ作品だ。

 続いて登壇した山田氏からは「男性育休白書2022」が紹介された。2022年10月から運用が開始される「産後パパ育休」に先駆けて、同社がすでに導入している「男性産後8連休」制度や、同社の育休取得実績も発表され、同社の今年8月末時点での育休取得者は1423名で、取得率はなんと100%を達成していることが示された。また、全国の小学生以下の子どもを持つ20代〜50代の男女9400人と、マネジメント層400人を対象とした調査結果も公開され、(1)配偶者評価 (2)育休取得日数 (3)家事・育児時間 (4)家事・育児参加による幸福感の4つの指標からポイント算出して順位を付けた「男性の家事・育児力全国ランキング 2022」では、1位が高知県、2 位沖縄県、3 位が鳥取県という結果となっている。また、【男性の育休取得や家事・育児の実態】や【男女9,400人に聞く、改正「育児・介護休業法」の影響】、【マネジメント層の男性の育休取得に対する思い】などの調査結果も公表されたのだが、マネジメント層の8割が男性の育休取得に「賛成」するも、同じく8割弱が「人手不足で業務に支障が出る」とも回答しており、悩めるマネジメント層の実態が浮き彫りとなった。

 パネルディスカッションでは「企業・組織が男性育休を推進する上での課題」をテーマに掲げ、世代間の問題や本人のモチベーション維持など、賛同企業や団体から寄せられたリアルな声をもとに、興味深い議論が展開された。育休を取り巻く実情が、それぞれのパネリストの立場や視点で語られ、育休の導入に悩むマネジメント層にとってはとくに、これからの自社の育休展開の参考になったのではないだろうか。

 今回の「男性育休フォーラム2022」で印象的だったのは、前3回のフォーラムよりも、ある意味「生々しい悩み」が露わになってきたということだ。制度改正もあり、「男性の育休はもう特別なことではない」という意識は全体的に芽生えつつも、マネジメント層には業務が停滞するという不安は拭いきれない。これまで、育休に対して傍観的だったマネジメント層も、もう他人事ではいられなくなってきているということの現れのようにも見える。育休取得率100%を達成している積水ハウスだけでなく、日産自動車や野村ホールディングス、デロイトトーマツグループなどの事例も紹介されたが、いずれもトップダウンから、横への広がりを積極的に展開して、育休の導入に成功している。

 「25年までに男性育休取得率30%」の達成に向け、国も男性育休取得推進に向けた制度の導入を加速しているが、制度だけでなく、企業のトップやマネジメント層の抱える不安を緩和し、安心して導入できるような施策をもっと考える必要があるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)