セイコーエプソンは、人や物に装着することで、スポーツなどの運動情報を簡単かつ高度に解析できる無線モーション計測システム「M-Tracer」を開発した。
「M-Tracer」は、同社の高精度・高安定な計測性能を持つ慣性計測ユニット(以下 IMU)と、ユーザーの用途に合わせて最適化した運動データの解析や3D可視化をするソフトウェア技術を合わせた総合システム。人の運動解析だけでなく産業・工業機器の運動計測・解析などへの適用も可能で、2012年初めに開発サンプルの提供を開始する予定となっている。
現在、ジャイロセンサーや加速度センサーなどの慣性運動を計測できるセンサーは、デジタルカメラなどさまざまな電子機器に搭載されている。しかし、ユーザーの商品に組み込み、センサー機能を効果的に使用するには、非常に高度な演算処理技術とそれぞれの用途に特化したノウハウが必要であるため、スポーツ、リハビリテーション、産業・工業などの分野においてはセンサー機能の活用はあまり進んでいなかったという。
そこでエプソンでは、センサー機能をより広い分野のユーザーが活用できるように、高精度・高安定で角速度と加速度のデータ計測ができるIMUと、運動データの解析や3D可視化をするソフトウェア技術を融合させた無線モーション計測システム「M-Tracer」を開発。内蔵したIMUが運動対象の角速度と加速度を正確に計測し、即座にデータを高速無線(Bluetooth)でPCなどに転送。さらに用途ごとにデータを最適化し、解析・3D可視化を行う。スポーツなどにおいて、信頼性の高いデータを定量分析し、その運動特有の物理量やパターンを把握することで、姿勢や運動軌跡を3D表示で直感的に認識しながら運動効率を高められる適切なフィードバックを得ることなどが可能となった。
現在、この「M-Tracer」の用途・研究開発をさまざまな分野の有識者と推進。スポーツバイオメカニクス分野の最先端研究を行っている慶應義塾大学SFC研究所の仰木准教授、太田特任准教授とは、動力学解析に基づく力学的エネルギーの可視化理論(3次元二重振り子理論)の開発、ゴルフスイングにおけるエネルギー伝達メカニズムの可視化、定量化に取り組んでいる。
同社は、2015年度における会社としてのありたい姿を定めた長期ビジョン「SE15」において、時間や圧力、角速度などを計測するセンシングを成長が見込める重要な事業領域と位置付けている。今後も、水晶を素材としたQMEMS技術を核に、保有する半導体技術やソフトウェア技術との融合をさらに進め、多岐にわたる製品やモジュール・システムなどのデバイスソリューションを提供、ユーザーの安心・安全・快適を実現していく。