コロナ禍で居酒屋チェーンの経営環境は大きく変化した。コロナ禍でテレワークが普及・定着し、会社の同僚との飲み会も激減した。また、感染予防対策の観点から忘年会や新年会など会社主催の宴会も減少傾向だ。また、若者の飲み会離れも指摘されており、宴席文化とも言われていた日本の企業文化もコロナを契機に大きく変わったと言える。こうした居酒屋を取り巻く環境変化の中で、居酒屋を利用する顧客の認識も、これまでの大人数の宴会タイプの利用から飲食や飲酒を楽しむ少人数タイプの利用へと二極化の傾向が見られるようだ。
10月31日に居酒屋やレストラン事業を展開するコロワイドが「会社員の飲酒に関する実態調査」の結果レポートを公表している(この調査は5月30日から6月1日に、東京・神奈川・千葉・埼玉在住の20~59歳の会社員800名を対象にインターネット調査として実施されたものだ)。これによれば、居酒屋を「よく利用する」との回答は10.5%、「時々利用する」29.3%、「以前は利用していたが、最近は利用していない」43.0%、「利用しない」17.3%となっており、現在利用者の合計は39.8%で、「以前は利用」の43.0%より少なく、やはりコロナ禍で客足は遠のいたようだ。実際、過去利用層の「最後に利用した時期」は「2~3年以内」が6割、「4年以上前」が4割となっている。コロナの影響で居酒屋から足が遠のいた者が多いようだが、それ以前から利用しなくなった者も4割存在する。
利用が減った理由は、「うるさい」の29.4%が最も多く、「落ち着いて会話できない」25.0%と続き、「食事が美味しくなかった」も14.8%となっている。レポートでは「宴会での利用による苦い経験が背景に伺える」としている。過去利用層が改善を希望するポイントとしては、「魅力的な食事」が28.2%で最も多く、次いで「座席間隔」24.6%、また「食事がもっと美味しくなれば」も18.7%と、食にこだわりグルメ的傾向が見られる。
店長経験者のO氏は「90年代後半~2000年初期までは、毎週金曜・土曜は宴会予約も多く」「ワイワイ・ガヤガヤ飲むことが普通でしたが、今の居酒屋チェーンは、少人数でゆっくり話をしに行く場に変わってきている」と指摘している。これからの居酒屋チェーンは美味しいコスパの良い食事を提供することで、遠のいた客足を戻せるかが勝負のようだ。(編集担当:久保田雄城)