馬毛島基地問題「環境保全措置を」環境相が意見

2022年12月07日 07:26

 米軍空母艦載機や自衛隊の「離着陸訓練」基地として防衛省が進めている鹿児島県西之表市馬毛島への建設に関して、西村明宏環境大臣は5日、浜田靖一防衛大臣に「馬毛島基地建設事業にかかる環境影響評価書に対する意見書」を提出した。意見書では「事業実施区域内に廃棄物処理施設が存在しない」として「供用開始前に関係自治体等と調整を実施し、処分先について具体化すること」も求めている。

 防衛省は種子島から約10キロ離れた馬毛島に全長2450mの主滑走路と横風用として全長1830mの滑走路の2本を計画している。完成すれば年間2万8000回の飛行が想定される。米軍による空母艦載機の離着陸飛行訓練は深夜3時までの飛行が可能になっており、騒音問題や動物など生態系への影響が強く懸念されている。意見書はこうした問題を最小限に食い止めるための内容になっている。

 それによると(1)地方公共団体や地域住民等への丁寧な説明を実施する等、透明性を確保するとともに事後調査等を適切に実施すること(2)航空機騒音については、予測結果は全ての地点で環境基準値を下回るが、可能な限り最大限の影響低減に取り組むこと。また飛行経路等の変更により、生活環境への重大な影響のおそれが考えられる場合、必要に応じ、予測を行い、必要な措置を実施すること(3)温室効果ガスに関しては、2050年カーボンニュートラル実現に向け、「防衛省気候変動対処戦略」等を踏まえ取り組むことを求めている。

 また、環境省レッドリストに入っている「マゲシカ」を守るため(1)生息地となる樹林地等の改変面積を可能な限り低減し、連続性を確保すること(2)マゲシカの餌資源となるシバ群落や樹林地、水飲み場等の再生、創出をすること(3)工事中、また供用後においても生息状況等に係る調査を行い、結果を踏まえて適切に環境保全措置を講じることとしている。

 あわせて馬毛島には「マゲシカ」のほか、天然記念物のオカヤドカリ類など貴重な動物が生存しており『生息環境への配慮が重要』と慎重な対応を求めている。ウミガメ類についても訓練区域での訓練で親ガメの上陸、産卵、孵化した仔ガメの行動への影響が懸念されるとして、遮光等の環境保全措置を講じるとともに、事後調査を実施するなど、動植物や生態系への影響を極力抑えるよう求めている。防衛省は今回の意見を踏まえ、丁寧な対応を、透明性を確保して行うことが基地建設への理解を得るうえで欠かせないことになる。(編集担当:森高龍二)