デンソー<6902>が、パワー半導体「SJ MOSトランジスタ」を半導体・電子部品メーカーである新日本無線にライセンス供与すると発表。「SJ MOSトランジスタ」は世界トップクラスの低オン抵抗を実現しており、今後もこの技術の利用を広めるべくライセンス活動を積極的に推進するという。
デンソーが開発したSJ MOSトランジスタの形成技術「トレンチ埋め込みエピ」は、シリコン製の基板上にミクロン単位の微細なトレンチ(溝)を掘り、基板上の結晶を化学反応で薄膜成長させてN型半導体とP型半導体の短冊構造にする点に特長がある。これにより微細な加工を実現しているだけでなく低オン抵抗と高速スイッチングを実現しており、電源機器や車載用電力変換装置などの小型化、省電力化に寄与する製品となっている。さらに、一般的に使われているSJ MOSトランジスタの形成技術と比べて加工回数が少ないため、低コスト化も図れるとのこと。
新日本無線は、2013年8月から20AクラスのSJ MOSトランジスタの量産を開始する予定。省電力化・小型化ニーズの高いコンピューター用電源、パワーコンディショナー、ACアダプターなどの分野に注力し、漸次、30A及び10Aクラスを開発するという。
パワー半導体と言えば、近時はSiCやGaNなどを用いた製品の開発ばかりが注目を集めるが、まだ量産が開始されたばかりであり、あらゆる製品に利用できる程ラインナップが出そろっているわけでもなく、一般に普及しているとは言える状況ではない。SiCやGaNが普及するまでの間の対策、また、SiCやGaNの製品を補完するものとして、優れた製品におけるこうしたライセンス供与が加速するのではないだろうか。(編集担当:井畑学)