ホンダは過日、東京・青山で同社の水素事業に関する説明会を開催した。そこで米ゼネラルモーターズ(GM)と共同開発している次世代燃料電池システム「e:FUEL CELL」のコンセプトモデルを公開し、2020年代半ばに次世代燃料電池システムのモジュールを他社へ外販を開始すると発表した。
ホンダは1998年からFCEVのプロトタイプを発表、FCX、FCXクラリティ、クラリティフューエルセルと着々と実績を積んできた。ただ、どれも「実験・試験的販売」という印象は拭えないものだった。が、しかし、2024年からホンダの燃料電池事業は大きな方向転換を迎えそうだ。
2040年にすべての新車のEVとFCV化を掲げているホンダの次世代システム「e:FUEL CELL」は、2021年9月まで発売していたFCV、クラリティ・フューエルセルと比較して、コストを1/3、耐久性を2倍に向上させ、同時に耐低温性も大幅に向上していると説明した。加えて、燃料電池の本格普及が見込まれる2024年に向け、さらなるコストの半減と2倍の耐久性を目標値として設定し、トータルで現在の約1/6のコストとすることで、現在の内燃機関エンジンと同等の使い勝手やコストの実現を目指して研究開発を進めるとした。
また、新型CR-Vをベースとして「e:FUEL CELL」搭載モデルを2024年に北米と日本で発売する予定だとも。新型モデルは水素充填による走行に加え、プラグイン機能を装備して充電によるEV走行も可能である。生産は米国オハイオ州メアリズビルのパフォーマンス・マニュファクチュアリング・センター(PMC)で、2024年から開始する予定だ。
さらにホンダは、コア技術である燃料電池技術を自社のFCEVだけに搭載・活用するだけでなく、次世代燃料電池システムのモジュールを他社へ販売するとした。水素はEVのバッテリーに比べ、エネルギーを高密度で貯蔵・運搬することができ、短時間で充填可能という長所を持つ。その特徴を活かし、バッテリーEVで対応が難しい、商用の大型トラックや重機、バスなとの大型車や、複数基の燃料電池システムを並列接続することで工場などの大型施設のインフラ電源などでも高い有用性が見込まれている。こうしたことから、FCEVに、大型商用車、定置電源、建設機械を加えた4つにフォーカスし、システム適用領域として運輸、産業分野に向けた事業開発も進めていく計画だという。
大型トラックについては日本国内で、いすゞと共同で公道での実証実験を2023年度中に開始予定だ。中国では、すでに東風汽車集団股份有限公司と次世代燃料電池システムを搭載した商用トラックの走行実証実験を2023年1月から開始している。(編集担当:吉田恒)