コロナ禍によって在宅勤務が一般的になった昨今、高カフェイン飲料のニーズが高まっている。カフェインといえば眠気覚まし、というイメージがあるが、実際に過剰に摂取するとめまいや心拍数の増加、不眠などの症状が現れることがある。これは中枢神経系が過剰に刺激されるためで、健康ブームもあってカフェインを控える人もみられた。カフェインレス飲料も販売を拡大しており、2025年度のペットボトル入りデカフェ飲料の市場は、2019年に比べると2.2倍近い広がりを見せている。
しかしここへきて、高カフェイン飲料に思いがけない追い風が吹く。2020年から拡大した新型コロナウイルス感染症の流行によって、在宅勤務やテレワークが社会に定着した。これがプライベートと仕事の境目を曖昧にさせ、頭の切り替えを難しくしており、高カフェインの飲料を飲んで集中力を上げ、仕事モードに切り替えるためにニーズが高まっているようだ。
2022年12月、サントリー食品インターナショナル(以下、サントリーBF)が発売した「KILLER COFFEE(キラーコーヒー)」はその代表といえる。カフェインの含有量は、同社のブラック缶コーヒー「BOSS」の約2倍、1本あたり157ミリグラムにもなる。「キラーコーヒー」を愛飲している20代の男性は、「エナジードリンクと同じ覚醒できる体感をコーヒーの香りや苦みで提供してくれるのは、選択肢が広がってうれしい」と語る。同社のエナジードリンクも売れ行き好調で、2022年11月に発売した「HYPER ZONe(ハイパーゾーン)」は400ミリリットル1本あたりのカフェインが150ミリグラムという商品だが、同ブランドの他商品に比べると販売数約2割増と好調だ。
エナジードリンクメーカーのレッドブル・ジャパンは従来のエナジードリンク「レッドブル」よりも大容量の、473ミリリットル入り商品を発売。化粧品や健康食品を販売しているイルミルドも、Amazon限定で新ブランド「ENERICHE(エネリッシュ)」からエナジードリンクの販売を始めている。250ミリリットルあたりのカフェイン量は120ミリグラムと、こちらも高カフェイン商品だ。エナジードリンクは商品1本あたりの容量を増やすことによって、炭酸飲料を愛飲する若い世代が購入するようになり市場が拡大してきたが、その販売数量は前年比2パーセントと成長が鈍化しつつある。
飲料総研の宮下和浩氏の分析によると、「アイテム数が増え、売り場拡大に伴う純増効果が無くなった。コンビニエンスストアで同じ棚で販売される免疫機能をうたう乳性飲料などが台頭し、間接的に競合している」とのことだ。ライフスタイルや勤務形態が多様化したことで、まだまだ高カフェイン、大容量、乳性飲料それぞれに商品は増加すると思われるが、今後は商品の差異化によって競合を回避することが重要となるだろう。(編集担当:久保田雄城)