日本の少子化の流れがより加速している。厚生労働省が発表した人口動態統計の速報値(外国人を含む)によれば、前年に比べて5.1%減の79万9728人にとどまった。80万人を割り込んだのは1899年の統計開始以来初めてだそうだ。厚労省は国内における日本人の出生数を6月にまとめる予定だが、77万人程度と見込まれている。
政府も「異次元の少子化対策」と称し、今後3年間を「集中取組期間」と位置付け、更なる児童手当の拡充や、子育て世帯への住居支援、教育費支援を導入していく方針だ。そんな政府の動きに先駆け、企業側も少子化に歯止めをかけるべく、様々な取り組みをしている企業が数多く存在する。
国内大手電機メーカーである株式会社日立製作所では、子育て制度が充実しており、産休・育休から復帰する人が多い企業の一つだ。育児や介護施設利用料や、送迎サービスに対する補助を選べるプランが用意されていたり、在宅勤務制度やフレックス制度も採用し、多様な働き方を選べる体制を確立している。父親が子育てしやすい企業に選ばれた実績も頷ける。
大手消費財科学メーカーの花王株式会社もグループをあげて子育て支援に力を入れている。子供が小学3年生を修了するまで時短勤務を認める制度や、共済会によるベビーシッターや学童のクーポンを準備されている。男性の育休取得実績は59%となっており、男性社員が参加する「復職支援セミナー」を実施し、社内での理解を深める努力も続けている。
政府が進めようとしている子育て世帯への直接支援や補助を、既に推し進めている企業もあれば、政府とは異なるアプローチで子育て支援を行う企業もある。国内大手ミツバチ産品メーカーの山田養蜂場だ。同社が主催する第6回「ミツバチの絵本コンクール」の表彰式が、先日都内で行われた。子供の情操教育として重要な「自然環境の大切さ」「社会とのつながり」「生命の尊さ」をテーマにした作品を募集し、前身のコンクールを含めると、累計6万点ちかくもの物語や絵本の応募実績がある。注目度と需要の高さに驚かされる。
経済的な支援は非常に重要だ。しかしながら、子育てはお金だけではなかなか上手くいかない。経済的な余裕や時間的な余裕が精神的な余裕を生み出し、子供と接する時間がより充実したものになるだろう。従って少子化問題は、なかなか政府だけでは解決に至らないだろう。企業や地域社会が力を合わせて両輪となることが重要だ。企業の取り組みを見ながら、そんなことを考えさせられる。(編集担当:今井慎太郎)