北朝鮮によるミサイル発射を念頭に日韓間で秘密軍事情報の共有を図る「日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」の早期正常化で実効性をあげる信頼関係構築へ弾みをつけることが両国に期待されている。
今年3月16日、GSOMIAの正常化に関して岸田文雄総理と韓国・尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領との日韓首脳会談で合意することができた。
そもそも不安定化を招いたのは輸出管理を巡り、2019年に政府が半導体素材の輸出規制に踏み切り、反発した韓国が世界貿易機関(WTO)に提訴、翌年には日韓輸出管理対話が途絶える状況に陥った経緯から両国の信頼関係に揺らぎが生じたことに起因する。
その意味では、3月の日韓首脳会談の意義は大きかった。首脳会談の成果を受けて日韓輸出管理対話が3年ぶりに再開され、政府は韓国に対し半導体素材3品目の輸出規制解除と輸出管理優遇対象国「グループA」への復帰を約した。今月18日から輸出管理制度などについての話し合いが韓国で行われる。
週明け17日には2018年3月以降、開かれていなかった日韓外交・安全保障分野の局長級による安保政策協議会(2プラス2日韓安全保障対話)がソウルで開かれる。日本からは船越健裕外務省アジア太洋州局長、安藤敦史防衛省防衛政策局次長らが出席する。
日韓間には竹島、徴用工(朝鮮半島出身労働者)、慰安婦、東京電力福島第一原発事故によるAPLS処理水の海洋放出、佐渡島の金山の世界文化遺産登録申請などに対する両国間での課題もあるが、北朝鮮をはじめとした安全保障問題はこうした課題を横に置いて、両国共通最優先課題として取り組まなければならない。
北朝鮮が13日に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)は液体燃料によるものでなく、発射準備を大幅に短縮できる「固体燃料」によるものだったという。
自民党国防議連事務局長の佐藤正久参院議員はツイッターで「固体燃料のICBM発射。キャニスターからミサイルを発射し、その後再点火するというゴールドローンチ方式(ミサイルとは別のガス発生器で生成されたガスの圧力で噴射し、空中でミサイルに点火する方式)をやっている。ミサイルの真ん中付近からスラスタも確認できる」と発信「間違いなく固体燃料技術は進歩している」とミサイル技術の進化を書き込んだ。「これからも何回か実験を繰り返し、火星18号をより信頼性を高めるに違いない」とも。
政府は北朝鮮によるミサイル発射に伴い「北海道周辺に落下の可能性がある」と道内エリアの住民に建物内や地下へ直ちに避難をとJアラートなどで呼び掛けた。そして幸いにして道内周辺にもわが国排他的経済水域内にも落下しなかったことが確認されたとして、後に訂正した。これには発出情報の精度に疑問の声も上がっている。正確で迅速な対応のためにもGSOMIAの実効性、日米韓の情報連携の深化が求められている。(編集担当:森高龍二)