来年度から75歳以上の公的医療保険料が段階的に引き上げられる。12日の参院本会議で自民、公明などの賛成多数で健康保険法改正が可決、成立した。
少子化対策と子育て世代への手当てを厚くするための財源確保が狙いで、政府は「全世代型社会保障」を強調する。
改正により、24年度は年収211万円(月額換算で17万5800円)を超える高齢者が引上げ対象になり、25年度には153万円(月額換算で12万7500円)を超える高齢者まで対象になる。政府は年収に応じて負担を求めるとしている。
引上げた保険料は「出産育児一時金」の一部に充てる。出産育児一時金は22年度まで42万円だったが、23年度から50万円に引き上げられている。このほか、少子化・子育て対策の一環で自営業者らが加入する国民健康保険で産前産後の保険料4か月を免除する。
立憲民主党の蓮舫参院議員はツイッターで「75歳以上の約4割が医療保険料負担増に。出産一時金増額の財源となるが、東京の出産費用平均額は約57万円、鳥取は約36万円と開きがある中、地域間格差等を考慮せず、将来見通しも不明なまま一律50万円。一時金は助かりますが、負担増が納得いく積算根拠ではありません」と発信し、問題を提起している。
また日本共産党の倉林明子参院議員は法改正に関する本会議での反対討論で「月13万円の年金暮らしに余裕などない。激変緩和措置対象とならない年収220万円では年間11万円もの保険料だ」と訴え「高齢者の多くは定期的に受診が必要な病気を抱え、貯蓄や生活費を削り、何とか受診しており、過重な保険料をこれ以上引上げることは命を脅かすもの。到底容認できない」と反対した。
倉林氏は「介護保険利用料2割負担の対象拡大や老健施設、介護医療院の多床室料負担について今夏までに結論を出すとしており、2割負担の対象は後期高齢者医療制度と横並びにすることも検討され、多くの高齢者が医療費も介護保険も2割負担を強いられることも否定できない」と高齢者の負担がさらに増えることになる可能性を強く懸念した。(編集担当:森高龍二)