【コラム】税の公平、応分負担の実現こそ政府が即すべき事

2022年10月16日 09:58

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所得格差、貧富拡大が目に見えて浮き彫りになる中、岸田内閣が今なすべきことは「税の公平、応分負担の実現」であり、政府税調はその視点を忘れてはならない

 最近、相次いで「社会的弱者」への税負担増、生活費切り詰めへの強硬策が浮かびつつある。一方、株式など金融資産所得への税に関して「所得倍増」からすり替えた「資産所得倍増計画」なる政策で「金融所得課税」の見直しが遠のいた。むしろ経団連の要望通り「NISA(少額投資非課税制度)恒久化」と「非課税投資枠の上限引き上げ」を打ち出す始末。

 所得格差、貧富拡大が目に見えて浮き彫りになる中、岸田内閣が今なすべきことは「税の公平、応分負担の実現」であり、政府税調はその視点を忘れてはならない。岸田総理の政策は自民党総裁選でのアピールとブレブレになっている。

 弱者へのしわ寄せ。年金は6月から0.4%削減した。さらに医療・介護でもしわ寄せが如実。今月から75歳以上の後期高齢者医療費窓口負担は約370万人が従来の「1割」から「2割」へ負担増になった。加えて介護を要する高齢者、高齢者と同居する家族にとって、さらに負担増につながる制度改正が検討されている。介護制度の見直し。

 介護サービスを受けるにはケアマネージャーが作成する「ケアプラン」(介護計画)が必要だが、作成費用は、現在は保険給付で賄われ、利用者に料金負担はない。しかし厚労省審議会は有料化を検討。介護サービス利用料の2割負担や3割負担の対象を年収基準額引き下げにより拡大し、介護費抑制につなげる考えだ。

 介護サービス2割負担は現行、単身で年金含め年収280万円以上、3割負担は340万円以上になっているが、基準額を下げれば介護費用を抑制できる。

 マスコミ報道では少子化対策で出産時に健康保険から支払われる「出産育児一時金」を大幅増額するため、資金捻出に75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の保険料引き上げでカバーすることを検討しているという。団塊世代を意識しているのか「全世代型社会保障」という名の下、高齢者いじめになる政策ばかりが目に付くようになった。

 その一方で岸田総理は総裁選挙で前面に打ち出した「所得倍増」を総理就任時に「資産所得倍増」にすり替えた。「金融所得課税見直し」を経済最優先で「先送り」と決め込んだ。

 1000兆円ある銀行預金・タンス貯金を株式市場に回そうと「資産所得倍増」を強調し、元本割れリスクを言わず、資産運用を促すムードづくりに経団連と歩調を合わせる。

 タンス貯金を株式市場へ促すには「金融所得課税」は軽くしなければならない。結果「非課税投資枠上限の引き上げ」になる。言っていることは「庶民向け」、やっていることは「経団連向け」。経済政策に限れば、その路線をひた走っている。

 加えて、税収確保のための「インボイス」も社会的弱者に重くのしかかる。消費税の適正徴収で税の公平を期すとの建前だが、財源確保が狙い。大企業優先政策で、弱小零細企業やフリーランス、果ては月収数万円のシルバー人材センターで働く労働者からも消費税を徴収する「インボイス」を来年10月から実施する。

 インボイスにのらなければ個人事業主は大手企業から仕事を受けられなくなるだろう。のれば自らも消費税納税者になる。1000万円以下で免税事業者だった中小零細業者が新たな負担を強いられる。1事業者あたり年間15万4000円以上の納税が新たに発生するとされる。商店街で看板を降ろす商店が続出しそうだ。少なくとも、消費税20%になるまでインボイスはすべきでない。

 立憲民主党は「中小・零細事業者が(発注者から)不当な値下げ圧力を受けたり、廃業を迫られたりしかねない懸念がある」と「インボイス制度廃止法案」を国会に提出している。是非、国会で審議すべき。現下での導入の問題が明るみになるだろう。

 税の公平、応分負担徹底の視点からすれば「インボイス」を予定通り導入したり、介護サービスを受ける費用負担を増やすなど、社会的弱者に負担増を求めるのであれば、岸田政権・与党は「所得税・住民税」の最高税率引き上げ実施や中小企業を除いて法人税率を28%に戻す措置、共産党提案の「富裕税」や「為替取引税」創設を行い、ここで生み出された増収税分を「国防費財源」に充てることだ。

 抜本的な防衛費拡充を検討する中で、恒久的な財源確保が必要だが、際限ない防衛費拡大につながりかねない「国債(建設国債・赤字国債・つなぎ国債)」で賄われたのではたまらない。

 富裕層、大企業に社会貢献していただく、いわゆる国のために『応分の負担』をしていただくよう、岸田総理は『防衛予算獲得のため』に陣頭指揮に立つべきだろう。純金融資産1億円以上の富裕層は2019年時点で133万世帯(総資産額333兆円=野村総合研究所推計)とされる。富裕層や大企業への甘い対応のまま、庶民の暮らしに負担増を強いることは「税の公平」からもバランスを欠く。国会で徹底議論を求めたい。

 経済同友会の桜田謙悟代表幹事は今後10年間で消費税率を13%に引き上げ、50年度には財政赤字が爆発しないためには19%必要になる」と「中福祉、中負担」を提言したが、共産党の志位和夫委員長は「法人税率引き上げにも、所得税最高税率引き上げにも反対し、消費税だけは減税どころか増税を平気で口にする。財界の身勝手極まれり」とツイッター発信した。筆者も同感だ。是非、岸田総理の受け止めを国会で聞いて頂きたい。(編集担当:森高龍二)