いよいよ、第49回先進国首脳会議「G7広島サミット」が閉幕する。
G7サミットは、日本、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国の7か国の首脳が一堂に会し、世界経済や地域情勢をはじめ、地球規模の課題や国際社会における重要な時事問題について意見交換を行い、その成果を文書にまとめて公表するものだ。特に今回は、ロシアのウクライナ軍事侵攻が続いている中、被爆から復興を遂げた広島で開催されるのは大きな意味を持つ。首脳たちが被爆の実相に触れ、平和の素晴らしさや尊さを共有することができれば「核兵器のない世界」の実現に向けた大きな一歩になると期待されている。
そしてもう一つ、サミットの重要課題として注目されるのが環境問題だ。4月15日、16日には、「G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合」が広島サミットに先立って開催され、脱炭素社会の実現や経済安全保障の強化などをテーマに話し合いが行われた。とくに焦点となった自動車分野の脱炭素化では、エンジン車なども含めたG7各国の保有台数をベースに、電気自動車はもとよりハイブリッド車も含めた幅広い選択肢を用いて、2035年までに2000年に比べて二酸化炭素の排出量を50%削減できるよう各国で努め、その進捗を毎年確認することで合意している。
また、再生可能エネルギーの普及に向けては、G7全体で、2030年までに洋上風力発電を現状の7倍にあたる150ギガワット(原発150基分)に、太陽光発電については、軽量薄型の次世代型パネルの普及などで、現状の約3倍の1テラワット(原発1000基分)まで拡大させるとしている。
これだけの規模の変革を成し遂げようとすれば、政府の政策だけではなく、民間の積極的な取り組みも必要だ。例えば、日本では大手住宅メーカーの積水ハウスが脱炭素経営に尽力し、成果を上げている。
同社はまず、太陽光発電システムを設置している同社の戸建て住宅で再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)の買い取り期間が満了(卒 FIT)したオーナーを対象に、他の電力会社と比較しても高水準で余剰電力を買い取る「積水ハウスオーナーでんき」の取り組みを推進している。2022年度の加入率は53%に上り、当初目標とした30%を大きく上回っている。また、同社の国内工場では、使用する電力の78.7%がすでに再生可能エネルギー由来のグリーン電力に切り替わっている上、業務用車両の電動化推進や、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)仕様を満たす社屋の建設や入居など、事業活動の脱炭素化を加速している。その結果、積水ハウスグループの2022年度の温室効果ガス(GHG)の排出量は、自社の直接排出(Scope1)と、他社から供給された電気の間接排出(Scope2)において、2013年度比で50%削減し、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示す、1.5℃に向けたGHG排出量の削減目標に整合する水準を満たしている。
G7広島サミットは21日に終了するが、これが成功したか否かはこの3日間だけで判断されるものではない。このサミットを境に、世界の平和や環境問題をはじめとする重要課題に対し、会期後もさらに積極的な取り組みを進めていくことが、議長国である日本の果たすべき役割なのではないだろうか。(編集担当:今井慎太郎)