岸田文雄総理は8日の総合科学技術・イノベーション会議で「フュージョンエネルギーでも早期実用化と産業化に向けた競争が(世界で)始まっている」とし「我が国もムーンショット型研究開発制度等を呼び水として、独創的な技術への研究開発投資を加速し、いち早く、社会実装につなげていく」と取組みを加速化することを強調した。
同会議が今年4月に示した「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」で示したフュージョンエネルギーの説明によると「軽い原子核同士(重水素、三重水素)が融合して別の原子核(ヘリウム)に変わる際に放出されるエネルギー」としている。
「太陽や星を輝かせるエネルギーでもある」とし特徴として(1)カーボンニュートラル=発電の過程において二酸化炭素を発生しない(2)豊富な燃料=燃料は海水中に豊富に存在し、ほぼ無尽蔵に生成可能で、少量の燃料から膨大なエネルギーを発生させることが可能)。
(3)固有の安全性=燃料の供給や電源を停止することにより反応が停止する(4)環境保全性=発生する放射性廃棄物は低レベルのみで、従来技術による処分が可能という特徴があるとしている。
このことからエネルギー問題と地球環境問題を同時に解決する次世代のエネルギーとして期待されているとしており、燃料の生成源となる海水は地球表面の3分の2を覆っており、技術保有で多くの国が燃料生成することが可能になる。資源の偏在性を解消し世界の平和と安定にも資するエネルギーとしても期待が高まっている。
同会議は「エネルギーの覇権が資源を保有する者から技術を保有する者へと移ることから、技術獲得によるエネルギー安全保障の確保が重要となる」とし、原型炉の発電実証時期とコストの明確化など、原型炉の早期建設が非常に大事だ、としている。文科省は2018年の原型炉研究開発ロードマップの一次とりまとめでは「発電実現時期を2050年ころ」としているが、この目標を前倒しして取組むことになるもよう。(編集担当:森高龍二)