通期見通しは、パナソニックは業績好転、ソニーは減益、NECは小幅増収増益
2月14日、パナソニックホールディングス、ソニーグループ、日本電気の電機大手3社の2023年4~12月期(第3四半期)決算が出揃った。
四半期決算の内容は、パナソニックが前年同期の減益から大幅増益へ転換し、ソニーが増収減益、NECが増収増益とまちまち。通期業績見通しはソニーが売上高及び金融ビジネス収入を下方修正し、利益各項目を上方修正したが、他の2社は修正を行っていない。
世界経済は東欧、中東で地政学的リスクが高止まりし、米欧ではエネルギー、原材料価格の高騰、インフレに対応するための利上げなど金融引き締めが進行。中国の景気後退はトンネルの出口が見えない。一方で日本経済は物価高で個人消費がふるわない中、インフラ投資、設備投資は堅調で、コロナ禍が下火になって海外から観光客がよみがえり、インバウンド消費が回復している。
電機業界はインバウンド需要があっても家電の不振が続く中、産業機械、「生成AI」という新市場が現れたITは需要が底堅い。自動車向け製品は世界的な電動化、電装化の流れが続き、車載電池などが重要な収益源になっている。輸出は為替の円安進行が収益を押し上げている。
■パナソニックは車載とAIが寄与し大幅増収増益
パナソニックホールディングスの4~12月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上高は1.2%増の6兆3003億円、営業利益は36.7%増の3202億円、税引前利益は44.4%増の3687億円、四半期純利益は140.0%増の4141億円、四半期純利益(最終利益)は145.1%増の3991億円という大幅増益決算で、前年同期の減益決算から大きく好転した。前年同期比約2.45倍になった最終利益の通期見通しに対する進捗率は86.7%である。
セグメント別では、くらし事業は中国、アジアの家電販売不振、ヨーロッパでのエアコンの需要減が影響して減収減益、オートモーティブは世界的な自動車生産の回復、為替の円安が大きく寄与し増収増益、コネクトは産業機器市場で「アビオニクス」が好調で増収・大幅増益、インダストリーは中国のFAや通信インフラの市況悪化が重くのしかかり減収・大幅減益、エナジーは減収・大幅増益だが、北米市場での車載電池や、生成AI向け需要の高まりで国内データセンター向け蓄電システムが好調だった。
利益についてはアメリカのインフレ抑制法に関わる補助金(IRA補助金)の計上効果が大きく出て、原材料価格の高騰、戦略投資による固定費増加の悪影響を相殺している。為替の円安による営業利益へのプラス効果は43億円だった。最終利益は米欧の利上げに伴う金融収支の良化も加わって大幅な増益になった。
通期業績見通しに修正はない。売上高は0.3%増の8兆4000億円、営業利益は38.6%増の4000億円、税引前利益は43.8%増の4550億円、当期純利益(最終利益)は73.7%増の46000億円で、売上高ほぼ横ばい、利益各項目は大幅増益という見通し。セグメント別業績見通しでは国内、中国の販売不振が長引きそうなくらし事業を下方修正し、オートモーティブ、コネクト、エナジーを上方修正した。予想期末配当、予想年間配当は未定となっている。ちなみに中間配当は前年同期比で2.5円増配の17.5円だった。
■ソニーは音楽、イメージセンサー、生保が業績けん引
ソニーグループの4~12月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上高及び金融ビジネス収入は20.2%増の9兆5398億円、営業利益は15.5%減の9793億円、税引前四半期純利益は10.8%減の9921億円、四半期純利益は9.6%減の7864億円、四半期純利益(最終利益)は9.6%減の7815億円という増収減益決算だった。4~12月期四半期純利益(最終利益)の通期見通しに対する進捗率は84.9%である。
ゲーム&ネットワークサービス分野はサードパーティー・ソフトウェアの増収や為替の円安の影響で大幅増益だが、累計販売台数5000万台を突破した「プレイステーション5」のハードウェア損益悪化で大幅減益。音楽分野は音楽制作も音楽出版も売上2ケタ増で大幅増収増益と好調。損益に200億円弱の影響が出たハリウッドのストライキが終結した映画分野は増収増益。エンタテインメント・テクノロジー&サービス分野はテレビの減収が響いて減収減益。イメージング&センシング・ソリューション分野はスマホなどモバイル端末向けのイメージセンサーの増収が効いて大幅増収増益で、過去最高益を更新している。金融分野はソニー生命の業績が大きく回復して大幅増収増益となった。
通期業績見通しは、売上高及び金融ビジネス収入は1000億円下方修正して12.1%増の12兆3000億円。分野別では金融、音楽、映画を上方修正しながら、ゲーム&ネットワークサービスを下方修正している。営業利益は100億円上方修正し9.4%減の1兆1800億円、税引前利益は300億円上方修正し6.6%減の1兆1900億円、当期純利益(最終利益)は400億円上方修正し8.5%減の9200億円としている。利益項目の通期見通し上方修正は金融分野の増益と、株式評価益の計上による金融収益の純増を反映させた。通期の増収減益見通しは変わらないが、増収幅を縮小し、減益幅を縮小している。予想期末配当は前期比5円増配の45円、予想年間配当は前期比10円増配の85円としている。
■NECは金融向け、航空宇宙・防衛分野が収益に貢献
日本電気(NEC)の4~12月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上収益は5.5%増の2兆3932億円、営業利益は22.3%増の698億円、税引前利益は18.3%増の681億円、四半期利益は14.6%増の427億円、四半期利益(最終利益)は29.1%増の340億円で、売上高に対する利益率は小さいものの増収増益決算。4~12月期のNon-GAAP四半期利益(最終利益)の通期Non-GAAP当期利益見通しに対する進捗率は39.0%である。
ITサービスのセグメントは大幅増収増益。国内需要が企業向け、官公庁向けとも好調。増収効果とSI(システム・インテグレーション)の収益性向上が寄与して増益。業種別の受注高では金融向けが29%の大幅増で、流通・サービス向けも7%増。海外は18%増だった。社会インフラのセグメントは増収増益。テレコムサービスはほぼ前年同期並みだが、ANS(航空宇宙・防衛)は大型案件を獲得でき受注が60%増と好調。その他のセグメントは減収で、営業利益はほぼ横ばいだった。
通期業績見通しに修正はないが、そのクリアに向けて業績は順調に推移している。売上高は民需向けを中心に2.0%増の3兆3800億円で、利益項目は増収効果が出て調整後営業利益は7.0%増の2200億円、Non-GAAP営業利益は11.7%増の2200億円、Non-GAAP当期利益は5.4%増の1400億円で、増収増益を見込んでいる。予想期末配当は前期比5円増配の60円、予想年間配当は前期比10円増配の120円で変わりない。
セグメント別ではITサービスの売上収益は国内5.3%増で、海外の0.7%減を完全にカバーできる見込み。社会インフラの売上収益はテレコムサービス0.4%減、ANS10.5%増を見込む。NECの通期の収益は金融向けと、2025年度までに約200億円の成長投資を行っているANSの貢献度が著しい。ITサービスでは自社開発の生成AIブランド「cotomi」が発表されたばかりで、今後、大きく伸びる可能性を秘めている。(編集担当:寺尾淳)